フランツ・ダンツィ

フランツ・イグナーツ・ダンツィ

フランツ・イグナーツ・ダンツィ（Franz Ignaz Danzi, 1763年6月15日 - 1826年4月13日）は、ドイツの多才な音楽家でした。チェリスト、指揮者、そして作曲家として、彼はヨーロッパの音楽史における重要な移行期に活躍しました。その活動は、後期古典派から初期ロマン派へと音楽のスタイルが変化していく時代と重なり、現代のコンサート文化が芽生え始めた時期と軌を一にしています。

バーデン＝ヴュルテンベルク州シュヴェツィンゲンに生まれたダンツィは、マンハイムで育ちました。彼の家族は音楽家の一家であり、著名なチェリストでモーツァルトにも称賛されたインノチェンツ・ダンツィを父に持ち、作曲家で声楽家のフランチェスカ・ルブランを姉に持っていました。彼は父とゲオルク・ヨーゼフ・フォーグラーに音楽の手ほどきを受けました。

若くしてその才能を認められたダンツィは、1778年にわずか10代で、当時ヨーロッパ屈指と評されたプファルツ選帝侯カール4世フィリップ・テオドールの宮廷楽団に入団しました。カール・テオドールがバイエルン選帝侯位を継承し、宮廷をミュンヘンに移した後も、ダンツィはしばらくマンハイムに留まります。そこで小規模ながら歴史ある劇場のオーケストラで経験を積んだ後、1784年には父の後任としてミュンヘンの宮廷楽団に首席チェリストとして戻りました。

1790年、声楽家のマリア・マルガレーテ・マルシャンと結婚したダンツィは、妻とともにオペラ公演のためにライプツィヒ、プラハ、ヴェネツィア、フィレンツェなど、各地を巡業しました。

1798年までにミュンヘンに戻った彼は、ヨーロッパ有数の音楽の中心地で第2宮廷楽長に昇進します。しかし、宮廷での待遇に対する不満や、それ以上の昇進が見込めないことへの失望から、1807年にミュンヘンを離れ、シュトゥットガルトへと移りました。そこではヴュルテンベルク王フリードリヒ1世の宮廷楽団で楽長の職に就きましたが、ミュンヘンに比べると規模も重要性も劣るものでした。さらに5年後の1812年、彼はカールスルーエに移り、晩年を王立音楽院の発展に捧げ、当地の宮廷音楽の水準向上に尽力しました。

同時代の著名な音楽家たちとの関わりもダンツィのキャリアの特徴です。彼は青年期にモーツァルトと交流があり、深く敬意を寄せていました。また、ベートーヴェンと同世代でしたが、当時の多くの音楽家と同様、ベートーヴェンの革新的な音楽に対しては賛否両論の複雑な感情を持っていたと言われます。さらに、若きカール・マリア・フォン・ウェーバーの指導にあたり、その作品を高く評価し、普及に尽力しました。

作曲家としてのダンツィは、しばしば第一級とは評価されないものの、極めて有能な音楽家でした。彼の作品の魅力は、その心地よい響きと巧みな構成にあります。現代においてダンツィは、特に木管五重奏曲の作曲家として最もよく知られており、各楽器の特性を見事に引き出したその筆致は称賛されています。彼はオペラ、教会音楽、8曲の交響曲を含む管弦楽曲、そして多様な室内楽曲など、当時の主要なあらゆるジャンルで作品を残しました。また、彼は優れたチェロのヴィルトゥオーソ（チェロ協奏曲も作曲しています）であり、影響力のある楽長、指揮者としても記録に残されています。

ダンツィの功績を記念し、彼の生誕地であるシュヴェツィンゲンの市立ホールは、2005年にフランツ・ダンツィと名を改めました。彼の楽譜は国際楽譜ライブラリープロジェクトなどで閲覧可能です。
参照することができます。

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