フランツ・ハルダー

フランツ・ハルダー：第二次世界大戦初期のドイツ陸軍参謀総長

フランツ・ハルダー（1884年6月30日 - 1972年4月2日）は、ドイツ陸軍の上級大将であり、第二次世界大戦初期に参謀総長を務めました。しかし、アドルフ・ヒトラーとの意見の相違から更迭され、その後の人生は複雑な道を辿りました。

軍人としての生い立ちと第一次世界大戦

ハルダーは、バイエルン王国のヴュルツブルクで、300年以上にわたり軍人を輩出してきた名門の家系に生まれました。1902年に士官候補生として軍に入隊し、砲兵学校、工兵学校、陸軍大学で学びました。第一次世界大戦では、東部戦線と西部戦線で参謀として従軍し、その功績により一級鉄十字章を受章しました。

参謀総長への道

第一次世界大戦後、ハルダーは国防省で戦術教官を務め、1933年にナチスが政権を獲得した後も、新政権とは距離を置いていました。しかし、1936年にアドルフ・ヒトラーと個人的な面識を得たことがきっかけで出世し、1938年には参謀総長に任命されました。前任者のルートヴィヒ・ベックは、ヒトラーの国防軍指揮への介入に抗議して辞任しており、ハルダーも当初はベックを中心とする将官グループと連携し、ヒトラー追放計画に関わっていました。

第二次世界大戦とヒトラーとの対立

参謀総長として、ハルダーは第二次世界大戦初期のドイツの侵攻作戦策定に関わりました。ポーランド侵攻、西方侵攻、バルバロッサ作戦などがその代表例です。1940年には上級大将に昇進しましたが、徐々にヒトラーとの作戦上の意見の相違が大きくなり、特にスターリングラード攻防戦をめぐる対立は深刻でした。ハルダーは、第6軍の側面がソ連軍の反撃に晒される危険性を警告しましたが、ヒトラーはスターリングラード占領に固執したため、1942年9月にハルダーは参謀総長を更迭され、予備役に編入されました。

逮捕、そして戦後

1944年7月のヒトラー暗殺未遂事件後、ハルダーは1938年のクーデター計画に関与していたことが発覚し、ゲシュタポに逮捕されました。フロッセンビュルク強制収容所、ダッハウ強制収容所などを経て、南チロル地方に移送されましたが、ヴィヒャルト・フォン・アルフェンスレーベン大尉の部隊によって救出され、アメリカ軍の捕虜となりました。

しかし、ヒトラーとの対立や強制収容所への収監という経歴が考慮され、ハルダーは反ヒトラー派将校として扱われ、戦争犯罪での訴追を免れました。1946年から1961年までアメリカ陸軍戦史研究部ドイツ支所の所長として働き、第二次世界大戦の戦史記述に大きな影響を与えました。1961年には、アメリカ陸軍から市民功労勲章を授与され、1972年にバイエルン州で死去しました。

フランツ・ハルダーは、軍人としての卓越した才能と、ナチス政権との複雑な関係、そして戦後の戦史研究への貢献を通じて、20世紀の歴史に名を刻んだ人物と言えるでしょう。

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