フリッツX

フリッツX (Fritz X)

フリッツXは、第二次世界大戦中のドイツが開発した滑空式誘導爆弾で、その正式名称はルールシュタール/クラマーX-1といいます。この爆弾は、1940年代初頭に設計およびテストが行われ、独特の誘導方式により、敵の艦船に対して高精度の攻撃を可能としました。

開発の背景

フリッツXの開発は1938年にベルリンのアドラースホフで始まりました。ドイツの航空研究所DVLのマックス・クラマー博士がSC-250爆弾の尾翼に関する研究を行った際、ドイツ空軍がその成果に注目したことがきっかけです。フリッツXは、徹甲弾のSD1400を基にした設計です。

フリッツXと同時期に開発されたHs293はロケット推進装置を持つ誘導爆弾であり、フリッツXとは異なる設計理念を採用しています。フリッツXには推進装置がなく、ドルゥフター式誘導装置が搭載され、手動で方向を指示する方式が採用されました。

性能と特徴

フリッツXは高高度から投下され、落下時に音速に近い速度に達することができました。この爆弾は目視誘導方式を採用しており、母機から5,000〜8,000メートルの高度で投下されます。母機はスロットルを戻し、着弾時には目標の真上にいる必要があります。この時、照準手はロフテ7爆撃照準機を用いてフリッツXを追尾し、目標まで正確に誘導します。

フリッツXの後部には照明用のフレアが取り付けられ、夜間にも使用可能な仕様が施されていました。誘導のための無線機器とジャイロスコープが搭載され、スポイラーによって爆弾の制御が行われます。しかし、一部の装置では性能が安定しない問題もありました。

実戦での使用

フリッツXは1943年にイタリアで実戦に投入され、特に連合軍に対する攻撃でその威力を発揮しました。有名な戦闘例には、イタリア艦隊に対する攻撃がありました。ドイツ空軍の爆撃機から投下されたフリッツXが戦艦「ローマ」を撃沈した事件があります。爆弾は艦艇の前部弾薬庫に命中し、引火により大規模な爆発を引き起こしました。

また、連合軍によるサレルノ上陸作戦中には、アメリカの軽巡洋艦「サバンナ」やイギリスの戦艦「ウォースパイト」にも攻撃が行われ、重大な損害を与えました。この時、フリッツXは敵艦の装甲を貫通し、艦内で爆発することで大きな被害をもたらしました。

生産と運用

フリッツXの生産効率は決して高く、月産数は約66機程度でした。全体で1,386機が生産されましたが、その半数は実験に使用されたため、実戦に投入されたのは限られた数でした。その後、フリッツXプログラムは母機の損失が増加したことから、早期に打ち切りとなりました。このような環境下で、フリッツXは偉大な技術の象徴となりつつも、運用の難しさとリスクを示す例ともなりました。

まとめ

フリッツXは、その先進的な誘導方式と高精度の設計により、第二次世界大戦中における爆撃戦略の新たな扉を開いた存在でしたが、その使用には様々な課題も伴っていました。相手国においても、同様の誘導爆弾の開発が進められており、戦場における空戦の様相が大きく変化する兆しを見せていました。

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