フリッパンシー

フリッパンシーは、イギリスで生産されたサラブレッドの牝馬です。1928年に小岩井農場が購入し、日本へ輸入されました。競走馬としては2歳と3歳シーズンに活躍しましたが、大きな勝ち星はありませんでした。しかし、引退後にその真価を発揮することになります。

フリッパンシーの偉大さは、その繁殖能力にあります。生涯で11頭の産駒を送り出し、そのうち66勝という驚異的な成績を収めました。中でも4頭の産駒が特に注目に値します。シアンモアとの間に生まれたタイホウは帝室御賞典を制覇し、種牡馬としても成功を収めました。ダイオライトとの間に生まれたセントライトは、日本競馬史上初の三冠馬となり、日本の競馬界に大きな衝撃を与えました。さらに、タイホウの全弟であるクリヒカリも帝室御賞典を優勝。プリメロとの間に生まれたトサミドリは皐月賞と菊花賞を制覇し、二冠馬として名を馳せました。これらの4頭だけで重賞競走で15勝、現在のGI級競走で8勝を挙げたのです。この記録は、2008年まで日本記録として長く君臨しました。

4頭のGI級競走優勝馬、うち2頭の顕彰馬という、類まれな繁殖成績は、日本の競馬史において他に類を見ない偉業です。さらに、アスパイヤリングとの間に生まれたハツガロンは地方競馬で活躍した後、台湾競馬にも遠征するほどの活躍を見せました。

フリッパンシーは、最後の産駒であるトサミドリがデビューする8日前に老衰で亡くなりました。しかし、その血統はその後も日本の競馬界に大きな影響を与え続けました。トサミドリは種牡馬としても成功を収め、1950年代を代表する種牡馬の一頭として数えられています。

フリッパンシーの牝系からも、数々の活躍馬が輩出されました。第4仔の第参フリッパンシーの仔であるヤシマヒメは、フリッパンシーの死から3ヶ月後に優駿牝馬（オークス）を制覇しました。また、その弟であるアヅマホマレは、第1回の朝日盃3歳ステークスで優勝しました。さらに、その子孫からは東京大賞典馬ヤシマナシヨナル、菊花賞馬ノースガスト、テュデナムキングといった名馬が誕生しています。

現在では、フリッパンシーの牡馬の子孫による父系は途絶えてしまいましたが、牝系は現代まで続いており、2000年代にはマイネサマンサが重賞2勝を挙げるなど、その血統の力は健在です。

フリッパンシーの父は、長距離重賞であるドンカスターカップとグッドウッドカップの優勝馬でした。祖母の半兄には、2000ギニーなど数々の競走を制覇し、2度の英チャンピオンサイアーとなったセントフラスキンがいます。

このように、フリッパンシーは競走馬としての成績こそ目立たないものの、類まれな繁殖能力で日本競馬界に多大な貢献をした、まさに伝説的な繁殖牝馬と言えるでしょう。その血統は、現代の競走馬にも脈々と受け継がれ、これからも日本の競馬界を支え続けることでしょう。

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