フリードリヒ1世 (マイセン辺境伯)

フリードリヒ1世の生涯

フリードリヒ1世（Friedrich I., 1257年 - 1323年11月16日）は、13世紀後半から14世紀初頭にかけて活躍したマイセン辺境伯（在位：1292年 - 1323年）およびテューリンゲン方伯（在位：1298年 - 1323年）です。彼は「勇敢伯（der Freidige）」と「噛跡伯（der Gebissene）」という二つの異名を持ち、その生涯は激動に満ちていました。父はマイセン辺境伯アルブレヒト2世、母は神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の娘マルガレータです。

生い立ちと「噛跡伯」の由来

伝説によれば、フリードリヒが「噛跡伯」と呼ばれるようになったのは、母マルガレータが父アルブレヒト2世との不仲から家を出る際、フリードリヒの頬を噛んでフランクフルト・アム・マインへ去ったためとされています。この逸話の真偽は不明ですが、父との関係は良好ではなかったようです。兄のハインリヒ、弟のディーツマンと共に、叔父であるランツベルク辺境伯ディートリヒの庇護を受けました。しかし、兄ハインリヒは1283年に行方不明となり、その後の消息は不明です。

ホーエンシュタウフェン朝の相続権主張

1268年、母方の従兄であるコッラディーノがイタリアで敗死すると、フリードリヒ1世はホーエンシュタウフェン朝の相続権を主張し、エルサレム王およびシュヴァーベン大公を自称しました。しかし、この主張は実効性を伴いませんでした。

父との内戦、そして領土の相続

父アルブレヒト2世が、異母弟のアピッツにテューリンゲンを継がせようとしたことに反発し、フリードリヒ1世は父との間で内戦を繰り広げました。当初は父が優勢で、フリードリヒ1世が捕らえられるなど劣勢に立たされましたが、後に巻き返し、1288年には父を捕縛しました。翌1289年に和睦が成立しました。1291年には、従弟のフリードリヒ・トゥタ（ディートリヒの子）が亡くなり、フリードリヒ1世はディーツマンと共にその遺領を相続しました。しかし、テューリンゲンは父によってローマ王アドルフに売却されていました。1298年にアドルフが戦死したことで、テューリンゲンは再びフリードリヒ1世の手に戻りました。

テューリンゲンを巡る争い

1307年にディーツマンが亡くなると、フリードリヒ1世はテューリンゲンを相続しました。しかし、ブランデンブルク辺境伯ヴァルデマールとの争いに敗れ、捕縛されてしまいます。1312年、解放と引き換えにラウジッツを割譲せざるを得ませんでした。しかし、1319年にヴァルデマールが、1320年にはハインリヒ2世（ヴァルデマールの従兄弟）が相次いで死去し、アスカーニエン家が断絶した隙をついて、フリードリヒ1世は奪われた領土の大部分を取り戻すことに成功しました。

晩年と死

1321年に脳卒中を患い麻痺が残り、1323年に生涯を閉じました。

結婚と子供たち

1286年、フリードリヒ1世はチロル伯兼ケルンテン公マインハルトの娘アグネスと結婚し、一子を儲けました。

フリードリヒ（1293年 - 1315年） - ザクセン＝ヴィッテンベルク公アルブレヒト2世の娘アンナと結婚

1300年、エリーザベト・フォン・アルンスハウク（ロブデブルク＝アルンスハウク伯ハルトマン11世の娘）と再婚し、二子を儲けました。

エリーザベト（1306年 - 1368年） - ヘッセン方伯ハインリヒ2世と結婚。
フリードリヒ2世（1310年 - 1349年） - マイセン辺境伯

フリードリヒ1世の生涯は、マイセンとテューリンゲンという二つの重要な地域を舞台に、領土を巡る激しい争いの中で繰り広げられました。彼の死後も、その遺産は後世に受け継がれていくことになります。

参考文献

岡地稔『あだ名で読む中世史－ヨーロッパ王侯貴族の名づけと家門意識をさかのぼる』八坂書房、2018年
Franz Xaver von Wegele (1877). "Friedrich I. (Markgraf von Meißen)". Allgemeine Deutsche Biographie (ドイツ語). Vol. 7. Leipzig: Duncker & Humblot. pp. 560–563.
Klöden, Karl Friedrich von (1844). Diplomatische Geschichte des Markgrafen Waldemar von Brandenburg vom Jahre 1295 bis 1323. Teil II. Berlin: M. Simion. p. 109.
Riedel, Adolph Friedrich Johann (1843). Codex diplomaticus Brandenburgensis. Sammlung der Urkunden, Chroniken und sonstigen Geschichtsquellen für die Geschichte der Mark Brandenburg und ihrer Regenten. Zweiter Haupttheil oder Geschichte der auswärtigen Verhältnisse der Mark Brandenburg und ihrer Regenten. Berlin: FH Morin. p. 319.
Wegele, Franz Xaver von (1870). Friedrich der Freidige, Markgraf von Meißen, Landgraf von Thüringen und die Wettiner seiner Zeit (1247–1325). Ein Beitrag zur Geschichte des deutschen Reiches und der wettinischen Länder. Nördlingen: Beck