フルミント

フルミント (Furmint) : ハンガリーを代表する白ブドウ品種

フルミントは、ハンガリーのトカイ地方で最も重要な白ブドウ品種であり、その地で造られる世界的に有名なトカイワインの主要な構成要素として知られています。トカイワインは、甘口のデザートワインとして特に有名ですが、フルミントは辛口のドライワインの生産にも用いられ、その多様性が魅力です。

起源と歴史

フルミントの起源には諸説ありますが、DNA分析の結果から、ハンガリー固有のブドウ品種である可能性が高いと考えられています。16世紀後半にはトカイ地方で栽培されていた記録が残っており、長い歴史を持つことが伺えます。

フルミントの名前の由来は、ワインの色合いが小麦色に似ていることから、フランス語の「小麦 (froment)」に由来するという説があります。

起源に関する異説

ベーラ4世による導入説: 13世紀にベーラ4世がモンゴル帝国の侵略からの復興のために、ブドウ栽培者を呼び寄せ、その際にフルミントが持ち込まれたという説。
イタリア起源説: イタリアの宣教師によって導入されたとする説や、イタリアの都市フォルミアに由来するという説も存在します。

しかし、これらの説はDNA分析の結果や、フルミントが7年戦争以前からハンガリーで栽培されていた記録があることから、否定的な見方が一般的です。

栽培

フルミントは晩生品種であり、春の霜の影響を受けやすい傾向があります。果実の房はバラバラで、皮が厚いため貴腐ワインの製造には適していますが、ウドンコ病には注意が必要です。一方で、乾燥には比較的強い耐性を持っています。

ハンガリーでは、フルミントの遺伝的多様性が高く、多くのクローンが存在します。これらのクローンは、果実の形や色などに違いが見られます。

ワインの特性

フルミントは、その高い酸度とフェノール化合物による複雑な風味が特徴です。辛口のドライワインは、スモーキーな香りと梨やライムのような風味が感じられます。甘口のデザートワインは、マジパン、ブラッドオレンジ、アプリコットのような香りが特徴的で、熟成を経るとタバコやシナモンのようなスパイシーな香りが加わります。

フルミントから造られるトカイ・アスーは、非常に長期の熟成に耐えうるポテンシャルを持ち、「不滅」と評されることもあります。

その他の地域での栽培

フルミントは、ハンガリー以外にも、スロバキア、オーストリア、スロベニア、クロアチアなどで栽培されています。これらの地域では、フルミントはそれぞれ異なる名前で呼ばれており、その土地の気候や土壌に合わせて、様々なスタイルのワインが造られています。

スロバキア: トカイ地方で甘口ワインの生産に使用。
オーストリア: 「モスラー」と呼ばれ、ブルゲンラント州やシュタイアーマルク州で栽培。
スロベニア: 「シポン」と呼ばれ、ドライワインとスイートワインの両方が造られる。
クロアチア: 「モスラヴァッツ」と呼ばれ、主にドライスタイルのワインを生産。

まとめ

フルミントは、ハンガリーのトカイ地方を代表する白ブドウ品種であり、その多様な特性から、辛口から甘口まで様々なスタイルのワインが造られています。その起源には諸説ありますが、ハンガリー固有の品種である可能性が高いと考えられています。フルミントは、ハンガリーのワイン文化を語る上で欠かすことのできない、重要な存在です。

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