フレットナー Fl 282

フレットナーFl 282（Flettner Fl 282）

フレットナーFl 282、またの名を「コリブリ」と呼ばれるこのドイツ製ヘリコプターは、エアロダイナミクスと技術革新の粋を集めて設計されました。本機は、アントン・フレットナーによって開発され、演技性能が高く、戦時中に特に注目を集めました。

機体設計

Fl 282は、単座式の開放型操縦席を有し、特徴的な交差双ローターを搭載しています。ローターハブは機体上部に配置されており、左右のローターはそれぞれ12度の角度で傾けられ、前方には6度の傾斜が付けられています。この設計により、ローター同士が接触することなく、逆方向に旋回できるようになっています。試作機では3翅のローターを使用していましたが、量産機では2翅ローターに変更されました。

エンジンには、ジーメンス・ウント・ハルスケ社のSh 14（生産会社はBMW/Bramo社によるBMW/Bramo 314Eとも呼称される）が搭載されており、空冷の星型7気筒エンジンで、排気量は7.7リットル、出力は150馬力に達します。このエンジンはトランスミッションを介して二軸に分割され、両側のローターを駆動しています。

歴史的背景

Fl 282は、1941年に初めて飛行に成功しました。この機体は、ドイツで初めて実戦に投入されたヘリコプターとして特筆に値します。その性能は、当時のFw 61を遥かに上回るものでした。フレットナーの工場は当初ベルリンにありましたが、空襲から逃れるためにシュヴァイドニッツに移転し、その後ソ連軍の接近を受けてバイエルン州のバート・テルツへと再度移りました。ここでは、Fl 282のエンジン供給元であるBMWの工場の隣に製作所を設置しました。

国が計画したのは1,000機の生産でしたが、工場が爆撃されたことにより、大量生産は行われませんでした。戦後に生き残ったのはわずか3機で、残りは鹵獲を恐れ破壊されてしまいました。現在、Fl 282の現物は極めて少なく、いくつかの部品のみが保存されています。

1942年には、バルト海のトラーヴェミュンデにて試験が行われ、多くの試作機の中から約20機が船団護衛任務として利用されました。航続力がある潜水艦から発進する非武装型の偵察機も計画されましたが、実現には至りませんでした。

派生型

Fl 282にはいくつかの派生型が存在します：

• - Fl 282 V1/7: 初期の試作機です。
• - Fl 282A-1: 単座偵察機型で、巡洋艦などに搭載され、テストが行われました。
• - Fl 282B-1/2: 複座の陸上型で、後部に偵察員が乗る設計です。
• - Fl 282U: 特殊装備を持つ潜水艦に搭載される予定の単座偵察機型ですが、計画のみで終わりました。

保存状況

フレットナーFl 282のいくつかの機体が博物館に保存されています。たとえば、Fl 282 V10 28368はイギリスのコヴェントリー近郊のミッドランド航空博物館に保存されており、フレームやローターヘッド、車輪などの部品が展示されています。また、Fl 282 V23はアメリカのオハイオ州デイトンにある国立アメリカ空軍博物館に保存されています。

フレットナーFl 282は、ヘリコプターの歴史において重要な役割を果たしており、その革新性は現在の航空機設計にも影響を与えています。

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