フレデリクスボー城

フレデリクスボー城：デンマークの壮麗なルネサンス宮殿

フレデリクスボー城は、デンマークのヒレレズにある、スカンディナヴィア最大のルネサンス様式宮殿として知られています。静謐なパラス湖に浮かぶ3つの小島の上に建ち、広大なバロック庭園に囲まれたその姿は、見る者を圧倒する美しさです。

歴史：王家の栄光と変遷

城の起源は1560年、フレゼリク2世による建設にまで遡ります。しかし、現在の壮麗な姿は、クリスチャン4世が17世紀初頭、オランダ人建築家ハンス・ファン・シュテーヴィンケルとロレンツ・ファン・シュテーヴィンケルを招いて大規模な改修・増築を行った結果です。クリスチャン4世はオランダ様式を好み、コペンハーゲンの建築にもその影響が見られます。

完成後、フレデリクスボー城はデンマーク王室の重要な拠点となりました。特に絶対王政時代には、宮殿内の教会で戴冠式や聖別式が盛大に行われ、数々の国王と王妃がここでその生涯の重要な儀式を執り行いました。戴冠した王と王妃には、クリスチャン5世とシャルロッテ・アマーリエ、フレデリク4世とルイーゼ、クリスチャン6世とゾフィー・マグダレーネ、フレデリク5世とルイーズ、そしてフレデリク6世とマリーなどが含まれます。

1693年からは、デンマーク最高勲章とダネブロー騎士称号授与の儀式も行われるようになり、「騎士の教会」としての役割も担いました。また、王室のコレクションを収蔵する場所としても活用され、次第に国家的記念館としての地位を確立していきました。1720年にはフレデリクスボー条約が締結されるなど、外交の舞台としても重要な役割を果たしました。

1850年代にはフレデリク7世の居城となり、再び王室の生活の場となりましたが、1859年、火災により宮殿の中心部はほぼ全焼という悲劇に見舞われます。しかし、国王や州からの多額の寄付、そしてカールスバーグ・ブルワリーの創業者J.C.ヤコブセンからの資金援助などにより、見事なまでに再建されました。この再建は、現在の国立歴史博物館設立の大きな契機となりました。

国立歴史博物館：絵画と歴史の宝庫

現在、フレデリクスボー城は国立歴史博物館として公開されています。館内には、デンマークの画家カール・ハインリッヒ・ブロッホによる膨大な絵画コレクションが収蔵されており、イエス・キリストの生涯を描いた作品などが多く含まれています。肖像画や歴史画を中心とした重要なコレクションは、デンマークの歴史を深く理解する上で欠かせないものです。

宮殿内の教会：聖なる空間と王室の象徴

城内の教会は「勲位のチャペル」としても知られ、現在も地元の教会として使用されるとともに、国立歴史博物館の一部として公開されています。教会の壁には、デンマーク王室勲章である「デンマーク最高勲章（象の紋章）」と「ダネブロー騎士勲章」の紋章が掲げられており、王室と深く結びついた歴史を物語っています。ヨアキム王子とアレクサンドラ・マンリーはここで結婚式を挙げ、アレクサンドラは後に「フレゼリクスボー女伯」の爵位を授けられています。

フレデリクスボー城：未来への継承

フレデリクスボー城は、単なる歴史的建造物にとどまらず、デンマークの歴史と文化、そして王室の栄光を伝える重要な場所です。その美しい姿と、そこに詰まった数々の物語は、未来へと受け継がれていくことでしょう。

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