フレデリクスボー条約

フレデリクスボー条約：北欧の勢力均衡を転換させた平和条約

1720年7月3日、デンマークのフレデリクスボー城で、スウェーデンとデンマークの間でフレデリクスボー条約が締結されました。この条約は、大北方戦争の一環として、両国間の講和を正式に成立させるものでした。条約の内容は、スウェーデンがデンマークに対して多くの譲歩を行うというもので、北ヨーロッパにおける勢力バランスに大きな変化をもたらしました。

条約の主な内容

フレデリクスボー条約は、スウェーデンにとって不利な内容が多く含まれていました。以下に主な内容をまとめます。

エーレスンド海峡の通行税免除特権の返上: スウェーデンは、長年保持していたエーレスンド海峡の通行税免除特権を放棄し、デンマークによる海峡通行税徴収を認めざるを得なくなりました。これは、スウェーデンの財政に大きな打撃を与えました。
デンマークへの賠償金支払い: スウェーデンは、デンマークに対して600万リクスダラーという巨額の賠償金を支払うことを約束しました。この支払いは、スウェーデンの財政をさらに圧迫しました。
ホルシュタイン＝ゴットルプ家への支援打ち切り: スウェーデンは、長年支援してきたホルシュタイン＝ゴットルプ家に対する支援を打ち切りました。これにより、スウェーデンの影響力は低下しました。
占領地の回復: スウェーデンは、デンマークに占領されていた領土を回復しました。これは、スウェーデンにとって数少ない有利な点でした。
シュレースヴィヒの獲得: デンマークは、シュレースヴィヒを獲得しました。これは、デンマークの領土拡大に繋がりました。
対ロシア協力の拒否: デンマークは、スウェーデンの宿敵であるロシアとの協力をしないことを約束しました。

条約の結果と影響

フレデリクスボー条約は、デンマークとスウェーデンの両国に大きな影響を与えました。

デンマークへの影響: デンマークは、大北方戦争によって国力が低下し、財政も逼迫していました。しかし、フレデリクスボー条約によって多額の賠償金を得ることに成功し、エーレスンド海峡の通行税収入も回復したため、財政状況は徐々に改善されました。また、スウェーデンから領土を獲得することはなかったものの、失うこともなかったため、国力を維持することができました。この条約は、デンマークの安定に大きく貢献しました。
スウェーデンへの影響: スウェーデンは、20年に及ぶ大北方戦争によって国力が著しく低下しました。フレデリクスボー条約は、スウェーデンにとって不利な内容が多く、さらなる衰退を招くことになりました。翌年のニスタット条約によって、スウェーデンは北方での覇権をロシア帝国に奪われました。これにより、スウェーデンの王権は制約され、「大国の時代」から「自由の時代」へと移行していくこととなりました。

まとめ

フレデリクスボー条約は、大北方戦争の終結に向けて重要な役割を果たしただけでなく、北欧の勢力バランスに大きな変化をもたらしました。デンマークは財政を立て直し、スウェーデンは衰退の一途を辿るという、両国にとって対照的な結果をもたらした条約であったと言えるでしょう。

参考資料

『北欧史』百瀬宏、熊野聰、村井誠人編（新版）、山川出版社〈新版世界各国史 21〉、1998年8月。ISBN 978-4-634-41510-2。
武田龍夫『物語 スウェーデン史 バルト大国を彩った国王、女王たち』新評論、2003年10月。ISBN 978-4-7948-0612-3。

関連項目

ストックホルム条約（1720年）
ニスタット条約（1721年)

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