フレデリック・エドウィン・チャーチ

フレデリック・エドウィン・チャーチ（Frederic Edwin Church, 1826年5月4日 - 1900年4月7日）は、19世紀アメリカを代表する風景画家です。コネチカット州ハートフォードで生まれ、実業家であった父の影響を受けながら、幼少期から芸術への関心を深めました。

18歳になったチャーチは、ワズワース・アテネウム美術館の創設者であるダニエル・ワズワースの紹介で、風景画家トマス・コールの弟子となります。コールのもとで2年間、ニューイングランド各地を写生し、風景画の基礎を学びました。しかし、チャーチの作風は、師であるコールとは大きく異なりました。コールが象徴的で物語性のある風景を描いたのに対し、チャーチは自然を丹念に観察し、そこに存在するありのままの姿を忠実に描くことを目指しました。人物を風景の中に配置することはほとんどなく、自然そのものが持つ壮大さ、美しさを余すことなく表現しようとしたのです。

1846年、ワズワース・アテネウム美術館がチャーチの作品を買い上げたことが、彼の画家としてのキャリアを大きく後押ししました。1848年にはナショナル・アカデミー・オブ・デザインの準会員となり、翌年には正会員に選出されています。同時期には後進の育成にも力を注ぎ、スティルマンやジャービス・マッケンティーといった画家を弟子として育てました。

チャーチの作品は、その卓越した写実性、圧倒的なスケール感、そしてドラマティックな表現が特徴です。ナイアガラの滝やアンデスの山々といった壮大な光景を、巨大なキャンバスに再現し、観る者に作者自身が体験した感動を追体験させようとしました。チャーチは、自然の持つ畏怖の念や、崇高な美しさを、綿密な観察と精緻な筆致で描き出し、アメリカ美術史において重要な位置を占める画家となりました。

彼の作品は、現在でも世界中の美術館に収蔵されており、多くの人々を魅了し続けています。風景画というジャンルにおいて、独自の表現を追求し、後世に大きな影響を与えたフレデリック・エドウィン・チャーチは、アメリカ美術史に燦然と輝く偉大な画家と言えるでしょう。

主な作品

『ナイアガラの滝』（The Fall of Niagara, 1857年）
『アンデスの心臓』（The Heart of the Andes, 1859年）
『コトパクシ山』（Cotopaxi, 1862年）

参考文献

芦田彩葵「ロスコ絵画におけるイメージの源泉」『美術史論集』第7巻、神戸大学美術史研究会、2007年2月、73-88頁。
岡田温司『虹の西洋美術史』筑摩書房〈ちくまプリマー新書〉、2012年。ISBN 978-4-480-68891-0。

関連項目

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