フレデリック・ジャコビ

フレデリック・ジャコビ（Frederick Jacobi、1891年5月4日 - 1952年10月24日）は、20世紀前半に活躍したアメリカ合衆国の作曲家です。カリフォルニア州サンフランシスコに生を受けた彼は、音楽の道を深く探求しました。

その教育背景は非常に多様で、初期にはニューヨークにてルービン・ゴールドマーク、エルンスト・ブロッホ、ラファエル・ジェゼフィ、パオロ・ギャリコといった著名な師事のもとで学びました。その後、さらに研鑽を積むためベルリンに渡り、パウル・ユオンに師事するなど、国内外で幅広い音楽教育を受けました。

キャリアの初期には、実践的な経験を積みました。1913年から1917年にかけては、権威あるメトロポリタン歌劇場でカペルマイスターとして活動しました。また、第一次世界大戦中には、陸軍軍楽隊にサックス奏者として所属し、兵役を務めました。これらの経験は、彼の音楽観に多様な視点をもたらしたと考えられます。

ジャコビの作曲活動において特筆すべきは、そのユニークな音楽的関心です。彼は特にアメリカ先住民の音楽に深い関心を抱いていました。1927年の冬には、ニューメキシコ州のディネ族やプエブロ族の居留地を実際に訪れ、現地の人々の音楽を熱心に研究しました。この経験は、彼の作品にインスピレーションを与えています。さらに、1930年代からはユダヤ宗教音楽の作曲にも力を入れるようになり、自身のルーツとも向き合った作品を生み出しました。

教育者としても才能を発揮し、1936年からは名門ジュリアード音楽院の作曲科教授に就任しました。後進の指導にもあたり、アメリカの音楽界に貢献しました。

彼の遺した作品は非常に多岐にわたります。管弦楽作品では、2つの交響曲、3つの交響詩、管弦楽組曲、そして管弦楽のための頌歌やインディアン舞曲などがあります。協奏曲としては、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための作品が知られています。その他にも、室内楽曲、オペラ、カンタータ、合唱曲、歌曲など、声楽や室内楽の分野でも多くの作品を残しています。これらの作品は、彼が受けた多角的な教育、そして先住民音楽やユダヤ音楽への関心といった多様な要素が融合された独自のスタイルを示しています。

ジャコビは、異文化への深い理解と自身の背景を音楽に昇華させた作曲家として、アメリカ音楽史において重要な位置を占めています。彼の作品は、当時のアメリカ音楽の多様性を反映しています。

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