フレデリック・セシジャー (初代チェルムスフォード子爵)

初代チェルムスフォード子爵：フレデリック・ジョン・ネイピア・セシジャー

フレデリック・ジョン・ネイピア・セシジャー（1868年8月12日 - 1933年4月1日）は、初代チェルムスフォード子爵として知られるイギリスの政治家、貴族です。彼は特に、1916年から1921年にかけてのインド総督としての役割で記憶されています。

生い立ちと初期の経歴

フレデリック・セシジャーは、陸軍大将である第2代チェルムスフォード男爵フレデリック・セシジャーの長男として、ロンドンで生まれました。ウィンチェスター・カレッジとオックスフォード大学モードリン・カレッジで教育を受け、1893年には法廷弁護士の資格を取得しました。政界に進出する前には、ロンドン・シティ評議会の議員を務め、1905年には第3代チェルムスフォード男爵の爵位を継承しました。その後、クイーンズランド総督（1905年-1909年）およびニューサウスウェールズ総督（1909年-1913年）を歴任し、植民地行政の経験を積みました。

インド総督として

第一次世界大戦中の1916年、チェルムスフォード卿はインド総督に任命されました。この人事は、彼がオーストラリアでの知事経験を持っていたものの、戦時下の人材不足が影響したと言われています。当初、インドのナショナリストたちは戦後の恩賞を期待してイギリスに協力していましたが、自治に関するイギリス政府からの具体的な保証がないことに不満を募らせていました。インド担当大臣エドウィン・サミュエル・モンタギューは、インド人の行政参加に理解を示し、モンタギュー＝チェルムスフォード報告を共同で提出しましたが、チェルムスフォード卿はこれに消極的でした。その結果、1919年インド政府法はモンタギューの主導で制定され、政府機能を二分する「両頭制」が採用されました。この制度では、中央政府はイギリスが支配し、各州の農業、教育、徴税はインド人大臣が担当することになりました。

大戦終結後も、チェルムスフォード卿はインド防衛法による非常大権を維持しようとし、1919年にローラット法を制定しました。この法律により、政治犯を陪審なしで裁判にかけたり、破壊活動家を裁判なしで投獄したりすることが可能になり、言論への規制も強化されました。ローラット法への反発はインド全土で暴動を引き起こし、経済に大きな打撃を与えました。チェルムスフォード卿は戒厳令を発令し、徹底的な弾圧を行いましたが、アムリットサル事件のような悲劇も発生しました。この事件では、レジナルド・ダイアー将軍率いる英印軍が無防備な群衆に発砲し、多数の死傷者が出ました。事件後、調査委員会が設置されましたが、チェルムスフォード卿の決定により全員が免責され、インド人の反感をさらに買いました。

外交面では、第三次アフガン戦争に直面しました。アフガニスタンのアマーヌッラー・ハーンは、イギリスの弱体化に乗じて外交権の回復を宣言し、イギリスを批判しました。アフガン軍がカイバル峠を占拠すると、チェルムスフォード卿は英軍を投入し、開戦に至りました。イギリス軍が優勢に進めたものの、周辺部族の動向やコレラの流行を懸念したチェルムスフォード卿は、アフガニスタンとの早期和平を望み、その結果、アフガニスタンの外交権回復を認めることになりました。

1921年に総督を退任したチェルムスフォード卿は、その強圧的な統治から、最も評価の低い総督の一人とされています。

その後

帰国後、チェルムスフォード卿は1921年にチェルムスフォード子爵の爵位を与えられ、1924年にはラムゼイ・マクドナルド内閣の海軍大臣を務めました。また、1926年から1928年にはニューサウスウェールズ知事代理を務めました。1933年4月1日に死去。


チェルムスフォード卿のインド総督としての統治は、反英感情を高め、その後のインド独立運動に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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