アマーヌッラー・ハーン

アマーヌッラー・ハーンの生涯

アマーヌッラー・ハーン（1892年6月1日 - 1960年4月26日）は、アフガニスタンの首長、後に国王として、激動の時代を生きました。父ハビーブッラー・ハーンの急死後、叔父を退けて王位を宣言し、アフガニスタンの独立を宣言しました。彼の治世は、国家の近代化と独立維持という二つの大きな目標を掲げていました。

独立と対外関係

1919年、アマーヌッラーはイギリスに対してジハードを宣言し、第三次アフガン戦争が勃発しました。この戦争は、アフガニスタンが独立を勝ち取る上で重要な転換点となりました。イギリス軍はアフガニスタンから撤退し、アングロ・アフガン条約（ラーワルピンディー条約）によってアフガニスタンの独立が正式に承認されました。また、アマーヌッラーはロシア・ソビエト連邦社会主義共和国との外交関係を樹立し、国際社会での地位を確立しようとしました。

近代化政策とその反発

アマーヌッラーは、アフガニスタンの近代化を積極的に進めようとしました。彼は、多妻制や未成年者との結婚を禁止し、女性の権利向上を目指しました。また、チャードルを被る義務を撤廃し、女学校を開校するなど、社会の変革を試みました。しかし、これらの改革は保守的な聖職者階級の強い反発を招き、1923年以降、各地で反乱が頻発しました。ハザラジャート州やパクティヤー州での反乱を鎮圧しましたが、根本的な問題は解決されませんでした。

王位の喪失と亡命

1928年、アマーヌッラーは首都カーブルの男性に洋服の着用を義務付けるという思い切った政策を打ち出しました。しかし、この政策は保守派からの強い反発を招き、アマーヌッラーの求心力を大きく低下させました。同年、各地で反乱が勃発し、特に「バッチャ・サカオの乱」が深刻化しました。イギリスは反乱指導者ハビーブッラー・カラカーニーを支援し、アマーヌッラーの打倒を画策しました。1929年、ハビーブッラー・カラカーニーがカーブルを占領し、アマーヌッラーは王位を兄に譲り、イタリアへ亡命しました。その後、アマーヌッラーはスイスで余生を送り、1960年にチューリッヒで亡くなりました。

その後の影響

アマーヌッラーの亡命後も、アフガニスタンの混乱は続きました。ハビーブッラー・カラカーニーも間もなく失脚し、ムハンマド・ナーディル・シャーが王位を継承しました。アマーヌッラーの改革は、短期的には失敗に終わりましたが、アフガニスタンの近代化を目指した彼の試みは、後世に大きな影響を与えました。彼の娘ナジア・ドアンは、後にトルコで「アフガンの王女」として知られるようになり、2019年にはアフガニスタンを訪問し、独立100周年を祝いました。

アマーヌッラー・ハーンの生涯は、アフガニスタンの近代化と独立という二つの大きな課題に挑戦した君主の姿を伝えています。彼の治世は、アフガニスタンの複雑な歴史と文化を理解する上で不可欠な要素です。彼の試みは、時として大きな反発を招きましたが、アフガニスタンを近代国家へと導こうとした彼の熱意は、歴史の中に深く刻まれています。

関連事項

ヴィタリー・プリマコフ
グレート・ゲーム
マフムード・タルズィー：アマーヌッラーの妻ソラヤ・タルズィーの父であり、アマーヌッラーの下で外相などを務めた。
ダルラマン宮殿：アマーヌッラー・ハーンにより建設された宮殿。

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