フレデリック・バスティア

フレデリック・バスティア（1801年6月30日 - 1850年12月24日）は、フランスの経済学者であり、古典的自由主義の思想家として知られています。その思想は、自由貿易の擁護と政府の介入に対する批判に特徴づけられます。

生涯

フランス南部の港町バイヨンヌで、実業家の息子として生まれました。幼少期に両親を亡くし、祖父母に育てられました。家業を継ぐために17歳で学校を中退しますが、貿易を通じて経済学に興味を持ち、独学で哲学、歴史、政治、文学、宗教など幅広い分野を学びました。特に、古典的自由主義者のジャン＝バティスト・セイから大きな影響を受けました。

1830年のフランス7月革命後、1831年にバイヨンヌの治安判事に任命され、翌年には県議会議員となりました。イギリスの穀物法を巡る論争では、リチャード・コブデンと反穀物法同盟を支持し、自由貿易の推進に尽力しました。1846年には自由貿易協会を創設し、フランス学士院の会員にも選出されています。1848年の二月革命後には、フランス立法議会の議員に選ばれ、政治の舞台でも活躍しました。

思想

バスティアの思想は、自由市場経済の擁護と政府の介入に対する批判を中心に展開されます。彼は、政府による経済への介入は、目に見える利益をもたらす一方で、目に見えない損失を生み出すと主張しました。彼の代表的なエッセイ『見えるものと見えないもの』では、政府が社会貢献をアピールする際に、目に見える効果ばかりを強調し、目に見えない結末や機会費用を無視する傾向を批判しています。例えば、政府が公共事業を行うことで雇用が創出されたとしても、その資金が他の生産的な用途に回されていた場合に得られたであろう利益は見過ごされがちです。バスティアは、こうした政府の政策が、実際には社会全体の富を減少させている可能性を指摘し、自由放任主義の重要性を訴えました。

著書

バスティアは、数多くの著作を通じて自身の思想を展開しました。主要な著書としては、以下のようなものがあります。

経済弁妄（1845年）：経済学における誤った考え方を批判的に分析した著作です。様々な誤謬を指摘し、自由市場経済の優位性を論証しています。
理財要論（1849年）：資本と利子に関する理論を展開した著作です。資本の役割と、利子が正当な報酬であることを主張しています。
経済調和論（1850年）：自由な経済活動が社会全体の調和をもたらすという考えを論じた著作です。各個人の追求が、結果として社会全体の利益につながることを説明しています。
La Loi（1850年）：法の役割について考察した著作です。法は、個人の自由と財産を保護するために存在すべきであり、社会主義的な再分配の手段として利用されるべきではないと主張しています。

影響

バスティアの思想は、後の自由主義思想に大きな影響を与えました。特に、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスをはじめとするオーストリア学派の経済学者たちは、バスティアの思想を受け継ぎ、自由市場経済の擁護と政府の介入に対する批判をさらに発展させました。彼の著作は、現代においても自由主義思想の古典として読み継がれています。

1850年12月24日、バスティアは結核のためイタリアのローマで亡くなりました。しかし、彼の思想は、今日においても自由と繁栄を求める人々に影響を与え続けています。

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