バイヨンヌ

フランス領バスクの中心都市、バイヨンヌ

バイヨンヌは、フランス南西部のヌーヴェル＝アキテーヌ地域圏、ピレネー＝アトランティック県に位置する都市です。バスク地方の中心都市として知られ、その豊かな歴史と文化は、訪れる人々を魅了します。アドゥール川とニーヴ川の合流地点に位置し、美しい水辺の風景が特徴です。

地理と都市構造

バイヨンヌは、ビスケー湾からアドゥール川を遡った場所に位置しています。市内は、アドゥール川とニーヴ川によって、大バイヨンヌ、小バイヨンヌ、サンテスプリの3つの区域に分かれています。これらの区域は橋で結ばれており、それぞれ異なる魅力を持っています。

大バイヨンヌ: アドゥール川左岸、ニーヴ川との合流点よりも下流に位置する市の中心部です。市庁舎やサント＝マリー大聖堂など、歴史的な建造物が多く残っています。
小バイヨンヌ: アドゥール川左岸、ニーヴ川との合流点の上流側に広がる商業地域です。バスク博物館やボナ美術館など、文化的な施設が集まっています。
サンテスプリ: アドゥール川右岸に位置し、シタデルやサンテスプリ教会があります。フランス国鉄のバイヨンヌ駅もこの区域にあります。

バイヨンヌは、近郊のビアリッツやアングレットとともに都市圏を形成し、経済、環境、教育など、多岐にわたる分野で協力体制を築いています。また、スペインのサン・セバスティアンとはユーロリージョンとして、国境を越えた連携も行っています。

歴史

バイヨンヌの歴史は古く、紀元前3世紀にローマ人の駐屯地が置かれたことに始まります。その後、バスク人の祖先であるヴァスコン人によって支配され、「バイヨンヌ」という名前が付けられました。この地名は、バスク語で「川」を意味する言葉に由来します。

中世には、ヴァイキングの侵攻やイングランドによる支配を経験しました。特にイングランド支配下では、軍事的な要衝として重要視され、百年戦争以降は英仏間で激しい争奪戦が繰り広げられました。この争いの中で、バイヨンヌで生産された武器が「バヨネット」という名前の由来になったと言われています。

その後、漁業やチョコレート製造が盛んになり、経済的に発展しました。特に16世紀後半には、イベリア半島から移住したユダヤ人によってチョコレート製造が始まり、バイヨンヌの特産品として知られるようになりました。20世紀には、スペイン・バスクの人々がこの地に移住し、小バイヨンヌに拠点を築きました。

産業と特産品

バイヨンヌは、金属精錬業や化学工業、水運業が盛んです。また、大西洋岸に位置することから、保養地としても知られており、近年ではマリンスポーツのリゾートとしての再開発も進んでいます。

特産品としては、生ハム、チョコレート、塩などが有名です。特に、エスプレット産トウガラシで味付けされたバイヨンヌのハムは「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」として、世界的に知られています。また、バスク伝統の仕込み杖「マキラ」も、バイヨンヌの特産品として知られています。

観光名所

バイヨンヌには、歴史と文化を感じられる観光名所が数多く存在します。

サント＝マリー大聖堂: 13世紀から14世紀にかけて建設されたゴシック様式の大聖堂で、「ノートルダム・ド・バイヨンヌ」とも呼ばれています。サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の一部として、世界遺産に登録されています。
シャトー・ヌフ: 13世紀にイングランド軍が建設した城郭で、15世紀にシャルル7世によって改修されました。
シタデル: 17世紀にヴォーバンによって建設された要塞で、サンテスプリに位置しています。
ハーフティンバーの家々: 大バイヨンヌの市街には、白い壁に赤い木組みが特徴的な真壁造りの家並みが残っています。
ボナ美術館: 19世紀フランス絵画のコレクションで知られています。
バスク博物館: バスクの文化や歴史に関する展示を行っています。

スポーツと祭り

バイヨンヌでは、アヴィロン・バイヨネという総合スポーツクラブが人気です。特にラグビーチームは強豪として知られています。また、バスク伝統の球技であるペロータ・バスカも盛んです。

毎年8月には、バイヨンヌ祭が開催されます。この祭りは、牛追い、バスクの伝統舞踊、コンサート、パレード、花火大会など、様々なイベントが盛りだくさんです。スペインのサンフェルミン祭に次ぐ規模を誇り、参加者は白と赤の衣装に身を包みます。

言語と交通

バイヨンヌでは、フランス語が主な言語として使われています。初等教育では、バスク語とのバイリンガル教育も行われています。

バイヨンヌ港は、ラック油田産出の硫黄や原油、農作物などの積み出し港として重要です。鉄道は、パリとアンダイエを結ぶTGV大西洋線が開通しています。また、ビアリッツ・アングレット・バイヨンヌ空港も市郊外にあり、国内外へのアクセスも便利です。

教育と出身者

バイヨンヌには、ポー大学付設のバイヨンヌ工業技術短期大学や、バイヨンヌ高等先端工業技術学校などの教育機関があります。

バイヨンヌ出身の著名人としては、法学者のルネ・カサン、作家のマリー・ダリュセック、元サッカーフランス代表のディディエ・デシャン、経済学者のフレデリック・バスティア、画家のレオン・ボナ、ピアノデュオのラベック姉妹、思想家のロラン・バルト、自転車競技選手のロジェ・ラペビーなどがいます。

姉妹都市

バイヨンヌは、以下の都市と姉妹都市関係を結んでいます。

クタイシ（ジョージア）
デイトナビーチ（アメリカ合衆国）
ベイヨン（アメリカ合衆国）
* パンプローナ（スペイン）

バイヨンヌは、その豊かな歴史、文化、そして美しい自然が調和した魅力的な都市です。訪れる人々を温かく迎え、忘れられない思い出を与えてくれるでしょう。

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