フローラ族

フローラ族：小惑星帯の内なる集団

フローラ族は、小惑星帯（メインベルト）の内側寄りに位置する、S型小惑星からなる大規模な集団です。これは、平山清次が発見した平山族の一つとして知られています。その起源や特性については、まだ解明されていない点が多く残されています。

発見と変遷

この小惑星族は、メインベルトに存在する小惑星の約4～5%を占めるほどの大規模なものです。発見当初、その境界が不明確だったため、フローラ自身が族の端に位置していたことから、一時的に「アリアドネ族」と呼ばれていました。しかし、フローラがこの族に組み込まれて以降、現在の「フローラ族」という名称が定着しました。

特徴

フローラ族の中で最も大きな小惑星は、直径約140kmの(8)フローラです。このフローラだけで族全体の質量の約80%を占めていますが、母天体に幾度となく衝突があったためか、かなり砕けた状態にあります。フローラ自身も、おそらく母天体の破片が寄り集まったラブルパイル天体だと考えられています。残りの破片の大部分は、(43)アリアドネが含み、さらに残りの約9%をその他の小さな小惑星が分け合っていると推測されています。

最初の衝突以来、母天体の破片の多くは、二次的な衝突などで消滅したと考えられています。たとえば、フローラの質量も母天体の約57%程度であり、フローラ族全体の質量を合わせても母天体の約80%にしかなりません。

フローラ族の小惑星は広範囲に分布しており、最も密集した領域から離れるにつれて徐々に密度が低下し、メインベルトと緩やかに混ざり合っているため、明確な境界線を引くことは困難です。また、この族には、二次的な衝突で形成されたと考えられる、統一性のない小惑星もいくつか紛れ込んでいます。これらは、小惑星族の典型的な例といえます。

奇妙なことに、フローラもアリアドネもフローラ族の端に位置しています。この特異な質量分布の理由は、現在も解明されていません。

中型の小惑星の中で最も有名な(951)ガスプラは、ガリレオ探査機が木星へ向かう途中で観測し、詳細な研究が行われました。ガスプラの研究から、この小惑星族が2億年以上の歴史を持つことが示唆され、母天体の構成を部分的に特定することにも成功しました。

また、フローラ族の小惑星は、地球に降り注ぐ隕石の約38%を占めるL型コンドライト隕石の母天体の有力な候補と考えられています。この説は、フローラ族がν6永年共鳴という不安定な領域に近く、小惑星のスペクトル特性がL型コンドライト隕石の母天体と一致することによって裏付けられています。

フローラ族は、平山清次によって発見された最初の5つの小惑星族「平山族」の一つであり、番号の若い小惑星を多く含んでいます。S型小惑星はアルベドが高く、フローラ族は主要な小惑星の集団の中で最も地球に近い位置にあるため、早期に発見されたと考えられています。

位置と大きさ

HCM（Hierarchical Clustering Method）の数値解析によると、フローラ族の中心的なメンバーの固有軌道要素は、概ね以下の範囲に収まるとされています。

半長軸: 2.17 - 2.33 AU
軌道離心率: 0.10 - 0.18
軌道傾斜角: 1.5 - 8.0°

しかし、この族の範囲は非常に曖昧なため、周辺の小惑星を含めると、以下の範囲に広がります。

半長軸: 2.14 - 2.42 AU
軌道離心率: 0.04 - 0.23
軌道傾斜角: 1.3 - 10.0°

1995年の分析では、中心付近に604個、広域には1,027個の小惑星が確認されました。2005年に発表された96,944個の小惑星データベースによると、上記の範囲に含まれる小惑星は7,438個存在しています。ただし、この中にはベスタ族やニサ族も含まれるため、実際にフローラ族に属する小惑星は4,000～5,000個程度と推定されています。つまり、フローラ族はメインベルト小惑星の4～5%を占めていることになります。

侵入小惑星

フローラ族が存在する領域は小惑星の密度が高いため、この族を形成した衝突とは無関係の小惑星も多数紛れ込んでいると考えられています。しかし、フローラ族ではないと断言できるものは少ないのが現状です。メインベルト内縁部にはS型小惑星が多く存在するため、区別が難しいからです。明確にフローラ族ではないと特定されているものは、比較的小さなものに限られています。

確実な侵入小惑星として挙げられるのは、(298)バティスティーナ、(422)ベロリーナ、(2093)Genichesk、(2259)ソフィエフカ、(2952)Lilliputia、(3533)豊田、(3850)ペルチャー、(3875)Staehle、(4278)Harvey、(4396)Gressmann、(4750)Mukaiなどです。


このように、フローラ族は、小惑星帯の内部に位置するS型小惑星の集団であり、多くの謎と興味深い特性を秘めている天体群です。

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