ブショーヤーラーシュ

ブショーヤーラーシュ：仮面の祭典と、その歴史と伝承

ハンガリー南部、ドナウ川沿いの街モハーチ。毎年2月、この街では独特の謝肉祭「ブショーヤーラーシュ (Busójárás)」が開催されます。その名は「ブショー（Busó）の行進」を意味し、伝統的な仮面をつけた人々が街を練り歩く、盛大な祭りです。

ブショーヤーラーシュは、灰の水曜日の前日までの謝肉祭の最終日を祝う行事として知られています。木曜日から6日間続くこの祭りは、その後も「キシュファルシャング（小さなファルシャング）」、「ファルシャング・ヴァシャールナプ（ファルシャングの日曜日）」と続き、最終的には「ファルシャングテメテーシュ（ファルシャングの埋葬）」で幕を閉じます。この一連の祭りは、マルディグラに相当する期間にわたって行われます。

ブショーヤーラーシュの起源については、2つの興味深い伝承が残されています。

伝承1：オスマン帝国支配からの解放

最も有力な説は、オスマン帝国によるハンガリー支配下での出来事にまつわるものです。モハーチの住民たちは、オスマン軍から逃れるため、近くの湿地や森に身を潜めていました。ある夜、住民たちが火を囲んで話し合っているところに、一人のショカツ人の老人が現れます。老人は、間もなく状況が好転し、故郷に戻れる時が来ることを予言し、その時まで備えるよう住民たちに指示します。そして、恐ろしい仮面をかぶり、大きな音を立てて戦うよう促し、姿を消しました。

住民たちは老人の言葉を信じ、嵐の夜に仮面をつけた集団となってモハーチに戻ります。その恐ろしい姿とけたたましい音に、オスマン兵は悪魔の襲来と勘違いし、嵐にまぎれて逃げ出したと伝えられています。

伝承2：冬の追放

もう一つの伝承では、ブショーはオスマン兵を脅かすためではなく、冬の到来を象徴するものを追い払うための儀式だとされています。厳しい冬を克服し、春の訪れを祝うという意味合いが込められていると考えられます。

どちらの伝承が事実であるかは定かではありませんが、ブショーヤーラーシュがモハーチの人々にとって、歴史と信仰が深く結びついた重要な祭りであることは間違いありません。

ブショーヤーラーシュは、地元のショカツ人だけでなく、クロアチア、セルビア、スロベニア、ポーランドなど、多くの国々から参加者が集まる国際的な祭りにもなっています。2009年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、その文化的な価値が世界的に認められています。

ブショーヤーラーシュでは、ブショーと呼ばれる仮面をかぶった人々が、独特の衣装を身につけ、伝統的な音楽やダンスを披露します。その様子は、まさに異世界からの来訪者を思わせるほどの迫力があります。仮面はそれぞれに個性があり、その造形には、歴史や信仰、そして地域特有の文化が凝縮されています。

ブショーヤーラーシュは、単なる謝肉祭を超えた、モハーチの人々の歴史と文化、そして精神性を象徴する、特別な祭りです。その独特の雰囲気と、力強い伝統は、多くの観光客を魅了し続けています。

関連事項

キリスト教以前のアルプスの伝統

外部リンク

モハーチ市公式サイト（ハンガリー語、英語、ドイツ語）
モハーチ市ブショーヤーラーシュ公式サイト（ハンガリー語）
ユネスコにおけるブショーヤーラーシュの紹介（英語）

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