ブッダデーブ・ダースグプタ

ブッダデーブ・ダースグプタ：映画と詩の両分野で活躍した巨匠

ブッダデーブ・ダースグプタ (1944年2月11日 - 2021年6月10日) は、インドの西ベンガル州を代表する映画監督であり、才能あふれる詩人でした。映画界においては、数々の名作を世に送り出し、国家映画賞を5度も受賞するなど、その功績は高く評価されています。一方、詩人としては、繊細で奥深い作品群を発表し、インド文学に独自の足跡を残しました。

生い立ちと教育

1944年、西ベンガル州プルリア近郊のアナラで、医師の息子として誕生しました。9人兄弟の3番目として、父タルカンタ・ダースグプタの仕事の関係で、幼少期は各地を転々としながら過ごしました。12歳の時にコルカタに移り住み、ハウラーのディナバンドゥ校に入学。その後、インド・パキスタン分離独立を経て、父とともにカラグプル、マネンドラガーと移り住む経験を積みました。成長後は、スコティッシュ・チャーチ・カレッジとコルカタ大学で経済学を専攻しています。

映画製作への転身とキャリア

ブルドワン大学のシャームスンダル・カレッジで経済学講師を務めていたダースグプタは、1976年、経済理論と社会・政治的現実の乖離に失望し、映画製作の道へと進みます。カルカッタ映画協会に入会し、チャップリン、ベルイマン、黒澤明といった巨匠の作品を研究し、映像表現の技術を磨きました。1968年には10分間の短編映画『Samayer Kache』で監督デビューを果たし、1978年には長編映画『Dooratwa』で本格的な映画監督としてのキャリアをスタートさせました。

初期の作品はサタジット・レイの影響を受けたリアリズムに重きを置いていましたが、その後、独自の抒情的な作風を確立していきます。特に高く評価された作品としては、『Bagh Bahadur』『Tahader Katha』『Charachar』『Uttara』などが挙げられ、これらを通して、社会問題や人間ドラマを繊細かつ力強い映像で表現しました。

詩人としての活動

映画監督としての成功だけでなく、ダースグプタは詩人としても優れた才能を発揮しました。数多くの詩集を発表し、その作品は、鋭い社会批評と抒情的な表現が見事に融合した独特のスタイルで知られています。代表的な詩集には、『Govir Araley』『Coffin Kimba Suitcase』『Himjog』『Chhaata Kahini』『Roboter Gaan』『Sreshtha Kabita』『Bhomboler Ascharya Kahini O Ananya Kabita』などがあります。彼の詩は、インド文学に新たな地平を切り開いたと高く評価されています。

映画作品一覧（抜粋）

長編映画の代表作として、『Bagh Bahadur』『Tahader Katha』『Charachar』『Uttara』の他、『Dooratwa』（1978年）、『苦いひとくち』（1979年）、『Grihajuddha』（1982年）、『Andhi Gali』（1984年）、『Phera』（1988年）、『Lal Darja』（1997年）、『Mondo Meyer Upakhyan』（2002年）、『Swapner Din』（2004年）、『Ami, Yasin Ar Amar Madhubala』（2007年）、『Kaalpurush』（2008年）、『Janala』（2009年）、『Mukti』（2012年）、『Patralekha』（2012年）、『Anwar Ka Ajab Kissa』（2013年）、『Tope』（2017年）など、多数の作品があります。ドキュメンタリー作品も多数制作しています。

参考文献

Buddhadeb Dasgupta: cinema of imprinted times, by Pradip Biswas. Aurora Film Corp., 1999
Films of Buddhadeb Dasgupta, by John W. Hood. Orient Blackswan, 2005. ISBN 81-250-2802-1.

ブッダデーブ・ダースグプタは、映画と詩の両分野において、類まれな才能と情熱でインドの芸術文化に多大な貢献をしました。彼の作品は、これからも多くの人々に感動と知恵を与え続けることでしょう。

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