ブナハーブン蒸溜所

ブナハーブン蒸溜所：アイラ島の異端児

ブナハーブン蒸溜所は、スコットランドのアイラ島に位置するスコッチウイスキーの蒸溜所です。アイラ島といえば、強烈なピート香が特徴のウイスキーが有名ですが、ブナハーブンは珍しくノンピートのウイスキーを主に製造しています。また、ブレンデッドウイスキー「カティサーク」の原酒としても知られています。

歴史

創業期

1881年、ウィリアム・ロバートソンとグリーンリース兄弟によって設立されました。当時、ブレンデッドウイスキーの需要増加に伴い、アイラウイスキーへの注目が集まっていました。ブナハーブンは、当時としては最大規模の年間20万ガロンを生産できる蒸溜所として誕生しました。

蒸溜所の名前「ブナハーブン」は、ゲール語で「河口」を意味し、蒸溜所がマーガデイル川の河口付近に位置することに由来します。マーガデイル川の水は、ウイスキーの仕込み水として使用されています。

当時、アイラ島の蒸溜所は船で原材料を運び込んでいたため、ブナハーブンも海岸沿いの辺鄙な場所に建てられました。また、近隣に高品質のピートと真水が豊富にあったことも決め手となりました。

1887年、ブナハーブンはグレンロセス・グレンリベット社と合併し、ハイランドディスティラリーズ社を設立しました。その後、長らくハイランドディスティラリーズ傘下で経営が続きました。

カティサークの原酒として

第二次世界大戦後、ブレンデッドウイスキーの人気が高まり、ブナハーブンも生産量を増加させました。1963年には蒸留器を増設し、生産規模を倍増。また、この頃からノンピート麦芽を使用したウイスキーの生産にシフトし、カティサーク向けのライトな原酒を供給するようになりました。

1980年代初頭にはウイスキー業界全体が生産過剰となり、ブナハーブンも1982年に一時生産を停止しましたが、1984年に再開しました。

エドリントングループによる買収以降

1999年、エドリントングループがハイランドディスティラリーズ社を買収。ブナハーブンの生産はほぼ休止状態となりましたが、2003年にバーンスチュワート社へ売却され、再びシングルモルトウイスキーの製造に力を入れるようになりました。2013年にはディスティル・グループがバーンスチュワート社を買収し、設備増強などの投資が行われています。

製造

ブナハーブンの年間生産能力は270万リットルです。

麦芽

ノンピート麦芽と、ポートエレン蒸溜所から仕入れたピーテッド麦芽を使用しています。ピーテッド麦芽による仕込みは1997年から始まり、現在では仕込みの約40%を占めています。

仕込み・発酵

仕込み水はマーガデイル川の湧き水を使用。石灰岩を通って湧き出るため、ピートの影響がなく、無色透明なのが特徴です。アイラ島で純粋な湧き水のみを仕込みに使用している蒸溜所はブナハーブンだけです。

蒸留

ポットスチルは初留器が2基、再留器が2基。特徴的なのは、くびれのないタマネギのような形状で、背丈も高いことです。この形状により、ライトな味わいの原酒が生まれます。

熟成・瓶詰め

熟成庫はダンネージ式で、バーボン樽とシェリー樽を使用。シングルモルト用の原酒は、ブナハーブンの熟成庫で熟成されます。

製品

ブナハーブンは、カティサークなどのブレンデッドウイスキーの原酒として使われる一方、シングルモルトウイスキーとしても販売されています。2010年以降は、瓶詰め度数を46.3%に変更し、着色や冷却濾過を行わないようになりました。

ピーテッドタイプの「モーイン」は、近年人気が高まっています。「モーイン」とはゲール語で「ピート」を意味します。

ボトルに描かれた水夫のイラストは、スコットランド民謡「Westering Home」がモチーフとなっています。

風味

一般的に、アイラモルトの中でもっともマイルドな味わいと言われています。評論家によっては、リッチでジンジャーのような風味と評されています。

受賞歴

ワールド・ウイスキー・アワードなど、数々の賞を受賞しています。

ブナハーブン蒸溜所は、アイラ島の他の蒸溜所とは一線を画す、独自の個性を持ったウイスキーを造り続けています。

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