ブノワ・ドゥローム

ブノワ・ドゥローム

ブノワ・ドゥローム（Benoît Delhomme）は、1961年8月28日にフランスで生まれた、国際的に活躍する撮影監督であり、また画家としても知られています。彼の姓は日本語では「ブノワ・デローム」と表記されることもあります。

彼のキャリアは、フランスの高等教育機関であるルイ・リュミエール国立高等学校で、映画の撮影技術を専門的に学んだことから始まりました。この教育機関での学びが、その後の彼の映像表現の基礎を築いたと言えるでしょう。

ドゥローム氏が撮影監督として広く認知されるきっかけとなった作品の一つに、1993年の映画『青いパパイヤの香り』（Mùi đu đủ xanh）があります。この作品は、トラン・アン・ユン監督とのコラボレーションであり、その繊細で詩的な映像美が高く評価され、カンヌ国際映画祭のカメラ・ドール（新人監督賞）を受賞しました。この成功に続き、トラン・アン・ユン監督とは1995年の『シクロ』（Xích Lô）でも再びタッグを組み、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞という栄誉に貢献しています。

彼はその後もフランス国内外で精力的に活動を展開していきます。1996年にはセドリック・クラピッシュ監督の『猫が行方不明』（Chacun cherche son chat）やセドリック・カーン監督の『家族の気分』（Un air de famille）といったフランス映画で撮影を手がけ、多様な作風に対応できる手腕を示しました。1997年の『アルテミシア』（Artemisia）では、女性画家アルテミシア・ジェンティレスキの生涯を追い、歴史ドラマにおける映像表現を探求しています。

90年代後半から2000年代にかけても、彼のキャリアは順調に進みます。1999年には『いつまでも二人で』（With or Without You）、『5シリングの真実』（The Winslow Boy）、『セクシュアル・イノセンス』（The Loss of Sexual Innocence）、『仮面令嬢』（Miss Julie）と、短い期間に立て続けに国際的な作品に関わりました。2000年の『発禁本』（Sade）では、作家サド侯爵を題材にした作品の撮影を担当しています。2001年には再びアジアに舞台を移し、ツァイ・ミンリャン監督の『ふたつの時、ふたりの時間』（你那邊幾點）に参加するなど、活動の幅を広げていきました。

その後も、様々なジャンルの作品でその手腕を発揮し続けます。2004年の『ヴェニスの商人』（The Merchant of Venice）のようなシェイクスピア劇の映画化、2005年の西部劇的な要素を持つ『プロポジション 血の誓約』（The Proposition）、2006年の人間ドラマ『こわれゆく世界の中で』（Breaking and Entering）、2007年のスリラー『1408号室』（1408）、2008年のホロコーストを扱った『縞模様のパジャマの少年』（The Boy in the Striped Pyjamas）など、そのフィルモグラフィーは非常に多彩です。

近年では、2012年の『欲望のバージニア』（Lawless）に始まり、スティーヴン・ホーキング博士の生涯を描いた2014年の『博士と彼女のセオリー』（The Theory of Everything）、スパイサスペンスである同年の『誰よりも狙われた男』（A Most Wanted Man）といった、世界的に大きな注目を集めた作品で撮影監督を務め、その映像表現が高く評価されています。2018年のゴッホを描いた『永遠の門 ゴッホの見た未来』（At Eternity's Gate）や、2020年公開の日本の水俣病を扱った『MINAMATA-ミナマタ-』（Minamata）など、アート系作品から実話に基づくドラマまで、その活躍は続いています。

彼の功績は受賞歴にも表れており、2005年には映画『プロポジション 血の誓約』での卓越した撮影が評価され、第47回オーストラリア映画協会賞において撮影賞を受賞しています。撮影監督としての輝かしいキャリアに加え、彼は画家としても活動しており、多才な芸術家としての側面を持っています。

ブノワ・ドゥローム氏は、そのキャリアを通じて、作品世界の空気感や登場人物の心情を巧みに映像に落とし込む能力を示してきました。彼の映像は、ジャンルや国境を超え、世界中の観客に深い印象を与えています。今後も彼の生み出す映像作品、そして画家としての活動から目が離せません。

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