ブラウン内閣 (第3次改造)

ブラウン第3次改造内閣：苦境の政権と総選挙敗北

2009年6月5日から2010年5月11日まで存在したブラウン第3次改造内閣は、ゴードン・ブラウン首相による、イギリスにおける3度目の内閣改造によって誕生しました。この内閣は、低迷する支持率、相次ぐスキャンダル、そして地方選挙での惨敗という困難な状況の中で発足しました。

危機に瀕した政権

2007年の発足以来、ブラウン政権は低支持率に悩まされてきました。リーマンショック後の世界金融危機への対応が一時的に支持率回復に繋がったものの、2009年には英国が景気後退に突入。元グルカ兵の永住権問題や議員の経費乱用問題といった負のニュースが相次ぎ、政権への批判は高まりました。党内では、ブラウン首相の辞任を求める声も強まっていきました。

辞任ドミノと地方選挙の大敗

議員の経費問題を巡り、与野党合わせて20名以上の議員が辞職に追い込まれる事態が発生。内務大臣やコミュニティー・地方政府担当大臣といった閣僚も辞任を表明しました。これらの辞任には、首相側近であるブラウン派と対立するブレア派の議員が多く含まれており、「反ブラウン」の動きが顕著に表れました。

6月4日に行われた地方統一選挙では、労働党は保守党だけでなく自由民主党にも敗北。この結果を受け、労働党の若手ホープ格であった雇用・年金大臣が、首相への辞任勧告と同時に自らも辞任を表明しました。その後も国防大臣、運輸大臣、ウェールズ大臣が相次いで辞任し、首相の記者会見中には欧州担当閣外大臣も辞任を発表。24時間以内に5人の閣僚が辞任するという異例の事態となりました。

これらの辞任劇は、首相への打撃となりました。辞任した閣僚の大半がブレア派であり、自身も経費問題で批判されていた議員が含まれていました。このため、彼らが辞任した行動は「計算づく」であったという見方も出ています。

改造内閣の発足

一連の辞任劇を受け、ブラウン首相は内閣改造を行い、新内閣を発足させました。改造では、党内有力議員は留任した一方で、内務大臣には次期党首の最有力候補が就任しました。財務大臣、司法大臣など、首相側近の閣僚も留任し、政権の安定を図る姿勢を示しました。

また、副党首の地位が向上した他、前首相ブレアの側近も重要なポストに就きました。さらに、元欧州議会議員のグレニス・キノックがヨーロッパ担当閣外相に就任するなど、内閣人事には注目が集まりました。

総選挙と政権の終焉

2010年4月12日、ブラウン首相は庶民院を解散し、総選挙に突入しました。選挙戦では首相自身の失言も報じられ、労働党は苦戦を強いられました。5月6日の総選挙の結果、労働党は保守党に敗れ、第一党の座を失いました。連立交渉も不調に終わり、ブラウン首相は辞任。デーヴィッド・キャメロンが新首相に就任し、13年に渡る労働党政権に幕が閉じました。

ブラウン第3次改造内閣は、支持率低迷、スキャンダル、地方選挙の大敗という三重苦の中で発足し、わずか1年足らずで崩壊した、短命に終わった政権でした。この内閣の経験は、イギリス政治史において、政権運営の難しさと、リーダーシップの重要性を改めて示すものとなりました。

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