ブラジルの教育

ブラジルにおける教育について

ブラジルの教育制度は、歴史的経緯を踏まえた一連の制度によって構成されています。この国では、教育は重要な権利として位置づけられており、国民一人ひとりに教育を受ける機会を提供しています。教育のルーツは、1500年のブラジル発見時にまで遡ります。当初、先住民族による無文字社会が存在していましたが、ポルトガルによる植民地支配が始まることで、教育の歴史が始まりました。

歴史的背景

1549年、ポルトガルのイエズス会士たちがブラジルに上陸し、教育事業を担いました。彼らは、インディオや植民地の子供たちに読み書きや算術を教え、カトリック教の布教と共に教育を広めました。しかし、ポルトガル王権は知識人層の形成を恐れ、大学の設立を避けました。18世紀のグアラニー戦争を経て、イエズス会はブラジルから追放され、教育の空白が生まれ、啓蒙思想の影響を受けたオラトリオ会がその期間を埋めました。

1808年には、ポルトガル宮廷がブラジルに移転し、新たな教育機関の創設が進みました。この時期に設立されたさまざまな専門学校は、将来的なエリート層を育成するための土台となりました。しかし、帝政期には民衆教育への配慮が不足し、多くの人々が教育を受けられませんでした。19世紀後半には非識字率が極めて高く、特に女性や奴隷の不識字率は深刻な問題でした。

20世紀に入り、教育制度の見直しが進められ、サンパウロ大学や連邦区大学といった大学が設立されました。また、1980年代以降には成人識字運動も行われ、多くの非識字者に教育の機会が与えられました。ただ、文盲や機能的非識字の問題は根強く残っています。

現行の教育制度

ブラジルの教育制度は、1988年の憲法によって義務教育を普遍的な権利として定めています。現在の教育制度は1971年に確立され、1996年には国家教育指針基本法が制定され、義務教育は8年間とされていますが、段階的に9年間に移行しています。教育課程は、就学前教育、初等教育、中等教育、高等教育の4つの段階に分かれています。

就学前教育

就学前教育は、0歳から5歳までの子供を対象とした乳児園（Creche）と幼稚園（Pré-escola）で構成されます。これにより、幼い頃からの教育が重視されています。

初等教育

初等教育は、6歳から10歳までの5年間を対象とし、年間200日以上の授業が求められています。留年制度は厳格で、留年率は高く、ラテンアメリカ全体で最高の数値を記録しています。

中等教育

中等教育は、初等教育を修了した生徒を対象とし、前期と後期に分かれています。普通科と専門課程に分かれ、専門学校も設立されています。大学受験前に私立予備校に通う生徒も多く、教育機関や教育方針に多様性をもたらしています。

高等教育

高等教育に進むには、大学入学試験に合格する必要があります。ブラジルには国立の公立大学と私立大学があり、1990年代以降には公立大学が評価されていますが、私立大学との質の違いも問題になっています。

課題

現在のブラジルの教育には多くの課題があります。特に、教育の質に対する不安や、識字率の向上が求められています。また、教育機会が不平等であるため、貧困層や地域によって教育のアクセスにも差があります。これに対する対策が今後の課題です。

結論

ブラジルの教育制度は、歴史的経緯を反映しつつ、現代においても改善の余地があります。硬直した制度の中で、今後どのように教育の質向上や平等な機会の提供が進められるかが、ブラジルの未来にとって重要となるでしょう。

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