ブラジル宇宙機関

ブラジル宇宙機関（AEB）について

ブラジル宇宙機関（Agência Espacial Brasileira；AEB）は、ブラジルの宇宙開発を担う国家機関です。ラテンアメリカ地域で最大の規模と実績を誇り、宇宙開発における重要な役割を果たしています。ブラジル空軍と共同管理するアルカンタラ射場を拠点とし、VLS-1ロケットなどの運用や国際宇宙ステーション（ISS）計画への参加など、多岐にわたる活動を展開しています。

概要

AEBは、ブラジルの宇宙開発における中核的な組織です。その活動は、ロケット開発、衛星打ち上げ、宇宙科学研究、国際協力など多岐にわたります。アルカンタラ射場は、赤道に非常に近い地理的優位性から、静止衛星の打ち上げに有利であり、燃料の節約にも貢献しています。AEBはアメリカ合衆国をはじめ、ウクライナ、イスラエル、アルゼンチン、中国、日本など、多くの国々と協力関係を築いています。

ブラジルの宇宙開発史

ブラジルの宇宙開発は、1961年から1993年までブラジル空軍が主導していましたが、1994年に文民の科学技術省に移管され、AEBが設立されました。それ以前には、国家宇宙事業委員会（CNAE）やブラジル宇宙事業委員会（Cobae）といった組織が存在し、宇宙開発の基礎を築いてきました。1971年には、CNAEがブラジル国立宇宙研究所（INPE）に再編され、衛星開発や宇宙科学研究を担当するようになりました。

1980年代には、アルカンタラ射場が建設され、1990年2月21日から運用が開始されました。この射場は、赤道からわずか2.3度南という地理的な利点から、静止衛星打ち上げの効率性が高く評価されています。アルカンタラ射場の建設には、約4億7千万米ドルが投じられました。

1994年、ブラジル政府は宇宙開発を国防省から科学技術省主導に転換し、AEBを設立しました。これにより、宇宙開発はより民生分野に重点が置かれるようになりました。AEBは、大統領直属の民生分野の人材によって率いられ、政策の実行に責任を負っています。

アメリカ合衆国は、ブラジルの宇宙開発において、技術的、財政的支援を通じて中心的な役割を果たしてきましたが、MECBにブラジル軍が関与していることを懸念していました。AEBの設立は、こうしたアメリカの懸念をかわす目的もあったとされています。

2003年8月22日、アルカンタラ射場ではVLS-1ロケットの打ち上げ準備中に爆発事故が発生し、21人の犠牲者が出ました。この事故は、ブラジルの宇宙開発に大きな影響を与えました。

有人宇宙飛行

2006年3月30日から4月8日にかけて、ブラジル空軍パイロットのマルコス・ポンテスがソユーズ宇宙船に搭乗し、国際宇宙ステーションに滞在しました。彼はブラジル人として初めて、またポルトガル語を母語とする者としても初めて宇宙飛行を達成しました。

国際協力

ブラジルは、カナダ、欧州宇宙機関、ロシア、フランス、中国など、多くの国や機関と協力関係を築いています。特にアメリカ合衆国は、ブラジルを通じて技術が他の国に流出することを懸念しており、ブラジルとの協力関係には慎重な姿勢を示しています。ブラジルは、日本やイスラエルなど、新たな協力パートナーを模索しています。

まとめ

ブラジル宇宙機関（AEB）は、ブラジルの宇宙開発を牽引する重要な機関です。アルカンタラ射場の地理的優位性を活かし、ロケット打ち上げや国際協力などを積極的に展開しています。ブラジルの宇宙開発は、軍主導から民生主導へと移行し、国際社会におけるプレゼンスを高めています。

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