ブラドッド

ブラドッド：伝説のブリトン王、バースの創設者

ブラドッド（Bladud）は、古代ブリトン人の伝説的な王であり、その実在を証明する確固たる証拠はありません。しかし、ジェフリー・オブ・モンマスの著作をはじめ、後世の作家たちによって様々な物語が語り継がれてきました。本稿では、ブラドッドの生涯と業績について、伝説的な要素を交えながら詳しく解説します。

生涯

ジェフリー・オブ・モンマスによれば、ブラドッドはルッドフッド・フディブラス王の子であり、ブリタニア最初の王ブルートゥスから数えて10代目の王でした。ウェールズの家系図の誤った解釈が、この説の根拠となっている可能性が指摘されています。

後世の物語では、ブラドッドはリベラル・アーツを学ぶために父親によってアテネに送られ、帰国後にはリンカンシャーのスタンフォードに大学を設立したとされています。しかし、その大学で教えられていた異教の教えが問題視され、カンタベリーのアウグスティヌスによって廃止されたと伝えられています。

治世とバースの建設

ブラドッドの治世は20年間で、紀元前863年または紀元前500年頃に始まったとされています。彼はカール・バルドゥム（現在のバース）を建設し、魔法の力で温泉を生み出しました。この町は、永遠に消えることのない炎を讃え、女神アテーナーまたはミネルウァに捧げられました。

ブラドッドがバースを建設した理由については、次のような逸話が残っています。アテネ滞在中にハンセン病に罹患したブラドッドは、帰国後に隔離されましたが、脱走してバース近郊のSwainswickで豚飼いとして働きました。ある日、豚たちがハンノキの荒れ地に入り、黒い泥にまみれて戻ってくるのを目撃しました。その泥は暖かく、豚たちは皮膚病にかからずにいました。ブラドッドは自らも泥風呂に入ってみたところ、ハンセン病が治癒したのです。その後、王位に復帰したブラドッドは、自分と同じように苦しむ人々のために、バースを建設したとされています。

翼と死

ブラドッドはネクロマンシーに熱心で、死者の魂を使って未来を予知しようとしたという話もあります。彼は翼を作り、トリノヴァントゥム（現在のロンドン）のアポローン神殿まで飛ぼうとしましたが、壁に激突して命を落としました。ブラドッドはトリノヴァントゥムに埋葬され、息子のレイアが後を継ぎました。

18世紀のバースの建築家ジョン・ウッドは、ブラドッドについて研究し、彼を古代ギリシアの信仰療法家ヒュペルボレイオス人アバリスと同一視するような奇抜な発想を提唱しました。

まとめ

ブラドッドは、伝説に彩られた古代ブリトン人の王であり、バースの創設者として人々に記憶されています。彼の生涯は、史実と伝説が入り混じり、様々な解釈が存在します。しかし、ブラドッドの物語は、古代ブリテンの文化や信仰を理解する上で貴重な手がかりを与えてくれます。

参考文献

Moyra Caldecott, The Winged Man (fictional account of the life of Bladud).
John Clark, Bladud of Bath: The archaeology of a legend, Folklore vol. 105 (1994), 39-50.
Howard C Levis FSA, Bladud of Bath: the British King who tried to fly, West Country Editions: Bath (1973).
MacKillop, James (1998). Dictionary of Celtic Mythology. Oxford. ISBN 0-19-860967-1.
Jean Manco, The mystery of Bladud, part of Bath Past.
ブリタニア列王史（訳：瀬谷幸男、南雲堂フェニックス）

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