ブリブジン

ブリブジン：帯状疱疹治療薬の詳細解説

ブリブジンは、帯状疱疹の治療に用いられる抗ウイルス薬です。様々な商品名（Zostex、Mevir、Brivirなど）で販売されています。本剤は、ウイルス複製を阻害することで効果を発揮します。他の抗ウイルス薬と比較して、1日1回の経口投与で済む簡便さが特徴です。

医療用途

ブリブジンは、成人における帯状疱疹（ヘルペス）治療に用いられます。アシクロビルやバラシクロビルといった既存薬とは異なり、1日1回服用するだけで効果が期待できます。一部の研究では、アシクロビルよりも高い効果を示すという報告もありますが、研究者の利益相反によるバイアスの可能性も考慮する必要があります。

禁忌事項

ブリブジンは、以下の患者さんには使用できません。

免疫抑制状態にある患者さん（臓器移植後など）
がん治療中の患者さん、特にフルオロウラシル（5-FU）やその類似薬（カペシタビン、テガフールなど）、フルシトシンなどの抗真菌薬を服用中の患者さん
小児、妊娠中または授乳中の女性

これらの患者さんへの安全性は確認されていません。

副作用

ブリブジンは一般的に安全性の高い薬剤ですが、いくつかの副作用が報告されています。

頻度が高い副作用：悪心（患者の約2％）
頻度が低い副作用：頭痛、血球数の減少（顆粒球減少症、貧血、リンパ球増加症、単球症）、肝酵素増加、アレルギー反応

薬物相互作用

ブリブジンは、抗がん剤であるフルオロウラシル（5-FU）とそのプロドラッグ、関連物質との間に強い相互作用（稀に致死的）を示します。5-FUの一時的な併用であっても危険です。これは、ブリブジンの主要代謝物であるブロモビニルウラシル（BVU）が、5-FUの不活性化に必要な酵素であるジヒドロピリミジン脱水素酵素（DPD）を不可逆的に阻害するためです。ブリブジン治療後、DPD機能は最大18日間損なわれる可能性があります。この相互作用は、類似の薬剤であるソリブジン（ソリブジンの主要代謝物もBVU）でも見られます。

その他の薬物との相互作用は、現時点では報告されていません。ブリブジンは、肝臓のシトクロムP450酵素系には明らかな影響を与えません。

薬理作用

活性スペクトル

ブリブジンは、帯状疱疹の原因ウイルスである帯状疱疹ヘルペスウイルス（VZV）と、口唇ヘルペスを引き起こす単純ヘルペスウイルス1型（HSV-1）の複製を阻害します。しかし、性器ヘルペスを引き起こす単純ヘルペスウイルス2型（HSV-2）には効果がありません。試験管内実験では、VZVに対する阻害濃度がアシクロビルやペンシクロビルよりもはるかに低いことが示されており、ブリブジンの高い有効性を示唆しています。

作用機序

ブリブジンは、ヌクレオシドであるチミジンのアナログです。活性型であるブリブジン5'-三リン酸は、ウイルス性チミジンキナーゼとヌクレオシド二リン酸キナーゼによるリン酸化反応で生成されます。ブリブジン5'-三リン酸はウイルスDNAに取り込まれ、DNAポリメラーゼの作用を阻害することでウイルス複製を阻止します。

薬物動態

ブリブジンは腸管から速やかに吸収され、肝臓で一次代謝（チミジンホスホリラーゼによる糖の切断）を受けます。生物学的利用能は約30％です。代謝産物は、抗ウイルス活性を持たないブロモビニルウラシル（BVU）です。BVUは血漿中で検出される唯一の代謝物です。

投与後1時間程度で最高血漿濃度に達し、95％以上が血漿タンパク質と結合しています。血漿中からの消失半減期は約16時間です。尿中に約65％、便中に約20％が排泄されます。排泄経路の主な形態は酢酸誘導体（血漿中では検出されない）ですが、尿素誘導体などの水溶性代謝物も存在します。元のブリブジンとして排泄されるのは1％未満です。

化学的性質

ブリブジン分子はデオキシリボース部分に3つのキラル炭素を持ち、全てが特定の立体配置（定位）を持っています。つまり、立体化学的に純粋な物質です。白色粉末状です。

製造と歴史

ブリブジンは、1976年に英国のバーミンガム大学で初めて合成されました。1979年には、ベルギーのRega研究所でHSV-1とVZVに対する強力な阻害効果が確認されました。1980年代には東ドイツでHelpinの商品名で市販されました。2001年に適応症が帯状疱疹に変更された後、ヨーロッパで広く利用可能となりました。現在、オーストリア、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペイン、スイスなど多くのヨーロッパ諸国で承認されています。主な供給元は、イタリアのメナリーニグループ傘下のベルリン・ケミーです。

語源

ブリブジンの名称は、化学名であるブロモビニルデオキシウリジン（BVDU）に由来しています。Bridic、Brival、Brivex、Brivir、Brivirac、Brivox、Brivuzost、Zerpex、Zonavir、Zostex、Zovudexなどの商品名で販売されています。

研究

コクランレビューでは、単純ヘルペスウイルス性角膜炎に対する複数の抗ウイルス薬の有効性が比較され、ブリブジンはイドクスウリジンよりも有意に高い治癒率を示すことが報告されています。

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