バラシクロビル

バラシクロビル：ヘルペスウイルス感染症治療薬

バラシクロビルは、ヘルペスウイルス感染症の治療に用いられる効果的な抗ウイルス薬です。グラクソ・スミスクライン社から『バルトレックス』の商品名で販売されています。本剤はアシクロビルのプロドラッグであり、優れた薬理作用を示します。

薬理作用

バラシクロビルは、アシクロビル（ゾビラックスなど）にバリンというアミノ酸が結合した構造をしています。このバリンとの結合が、体内への吸収性を飛躍的に向上させています。服用後、小腸で吸収され、肝臓でバリンとアシクロビルに分解されます。アシクロビルが抗ウイルス作用の中心的な役割を果たし、ウイルス増殖を抑制します。そのため、肝機能が正常に働くことが薬効発現の前提条件となります。経口摂取のアシクロビルと比較して、バラシクロビルは生体利用率が大幅に高くなっていることが特徴です。

効能・効果

バラシクロビルは、1型および2型単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する有効性が認められています。主な適応症として、以下の疾患が挙げられます。

単純ヘルペスウイルス感染症: 口唇ヘルペスや性器ヘルペスの治療に用いられます。再発を繰り返す性器ヘルペスにおいては、再発抑制を目的とした予防投与も可能です。
水痘・帯状疱疹ウイルス感染症: 水痘や帯状疱疹の治療に用いられます。

副作用

バラシクロビルは一般的に安全な薬剤ですが、重篤な副作用を起こす可能性も否定できません。医師の指示を厳守し、服用にあたっては注意が必要です。報告されている主な副作用には以下のようなものがあります。

腎障害: 間質性腎炎（尿細管間質性腎炎）、急性腎障害（急性尿細管壊死）など。腎機能障害を持つ患者は特に注意が必要です。
神経系: 痙攣、てんかん発作など。脳神経系の既往症を持つ患者は注意が必要です。
消化器系: 急性膵炎（薬剤性膵炎）など。
アレルギー反応: アナフィラキシーなど。アレルギー症状が出現した場合は直ちに服用を中止し、医師に相談してください。
肝障害: 薬物性肝障害など。肝機能障害を持つ患者は注意が必要です。
呼吸器系: 間質性肺炎など。
血液系: 播種性血管内凝固症候群、血小板減少症、無顆粒球症（顆粒球減少症、好中球減少症）など。
皮膚粘膜系: 中毒性表皮壊死融解症（中毒性表皮壊死症）、スティーブンス・ジョンソン症候群など。
* その他: 薬剤性脳症など。

これらの副作用以外にも、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状や、頭痛、めまい、倦怠感などの全身症状が現れる可能性があります。

重要な注意

バラシクロビルを服用する前に、医師または薬剤師に、現在服用している薬や既往歴、アレルギーなどについて詳しく伝えましょう。妊娠中または授乳中の方、腎機能・肝機能に問題のある方は、特に注意が必要です。医師の指示を必ず守り、正しく服用することで、効果的に治療を行い、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。

参考文献

田中千賀子、加藤隆一編集 『NEW薬理学 第6版』 南江堂 2011年 ISBN 9784524260881

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