ブルガリアワイン

ブルガリアワイン：多様なテロワールが生み出す豊かな味わい

ブルガリアワインは、東ヨーロッパに位置するブルガリアで作られるワインです。ブルガリアにおけるブドウ栽培とワイン造りの歴史は古く、その起源はトラキア時代にまで遡ります。ワインは、ブルガリアビールやラキヤと並び、ブルガリアで最も親しまれているアルコール飲料の一つです。

1980年代には、ブルガリアは世界第4位のワイン輸出国として知られていましたが、共産主義政権の崩壊後、ワイン産業は一時衰退しました。しかし、その後、生産量は徐々に回復し、2011年には前年比4.9%増の1億8百万リットルに達するなど、再び注目を集めています。

ブルガリアの主要なブドウ栽培地域

1960年7月13日の政府令により、ブルガリアは公式に5つの異なるブドウ栽培地域に分けられました。それぞれの地域で気候や土壌が異なり、栽培されるブドウ品種やワインのスタイルも多様です。

1. ドナウ平原（北ブルガリア）

ドナウ平原は、ドナウ川の南岸とドナウ平原の中部から西部を網羅する地域です。湿潤大陸性気候で、夏は暑く、年間を通して晴天が多いのが特徴です。マスカット、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネ、アリゴテ、パミドなどの品種が栽培され、地域品種のガムザも使われます。

2. 黒海（東ブルガリア）

黒海沿岸地域は、ブルガリア全体のワイン生産量の約30%を占める重要な地域です。長く穏やかな秋が特徴で、ブドウの糖分蓄積に最適な気候条件を備えています。そのため、良質な白ワインの生産地として知られ、国内の白ワイン品種の53%がこの地域に集中しています。ディミャート、リースリング、マスカット・オットネル、ユニ・ブラン、ソーヴィニヨン・ブラン、サヴァニャン、ゲヴュルツトラミネールなどの品種が栽培されています。

3. バラの谷（下バルカン）

バラの谷は、バルカン山脈の南に位置する地域です。東部と西部の小地域に分けられ、マスカット、リースリング、ルカツィテリ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどの品種が栽培されています。主に辛口またはやや辛口の白ワインが生産され、少量の赤ワインも造られています。スングルラレ渓谷は、ブドウ品種レッド・ミスケットで特に有名です。

4. トラキア低地（南ブルガリア）

温暖な大陸性気候と、降水量の良好な分布が特徴のトラキア低地は、上トラキア低地で育つ赤ワインの発展に不可欠な地域です。低地の中心部とサカール山地の一部が含まれ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、マスカット、パミッドの他、ブルガリアを代表する地産ブドウ品種であるマヴルッドも栽培されています。バルカン山脈が北からの寒気を遮る役割を果たし、マリツァ川流域の渓谷は地中海性気候の影響を受け、穏やかで雨の多い冬と、暖かく乾燥した夏が特徴です。

5. ストルマ川渓谷（南西ブルガリア）

ストルマ川渓谷は、ブルガリア南西部、マケドニアの歴史的地域に位置します。面積は小さいながらも、南からの地中海の影響を強く受けるため、気候的に非常に明確で特徴的です。シロカ・メルニシカ・ロザ（メルニックからその名を冠した品種）、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどが栽培されています。

ブルガリアワインは、その多様なテロワールとブドウ品種から、バラエティ豊かな味わいを生み出しています。ぜひ、お好みのブルガリアワインを見つけて、その魅力を堪能してください。

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