ストルマ川

ストルマ川：歴史と自然が織りなす流域

ストルマ川は、ブルガリア語でストルマ、ギリシャ語でストリモナスと呼ばれる、バルカン半島を流れる重要な河川です。古代ギリシャではストリュモンと呼ばれていました。ブルガリアのヴィトシャ山を源流とし、西へ流れた後、南へと向きを変え、ギリシャ領を通過してエーゲ海に注ぎます。全長415kmのうち、290kmがブルガリア国内を流れ、同国で5番目に長い川です。流域面積は1万800平方キロメートルに及びます。

地理と環境

ブルガリア側では石炭が採掘され、ギリシャ側では農業が盛んです。ギリシャ側の渓谷は国内で4番目の規模を誇ります。中流部にはケルキニ湖という貯水池があり、多様な浮水植物が生息しています。この地域は1975年にラムサール条約登録地となり、その豊かな生態系が保護されています。主な支流には、リルスカ川、コンスカ川、アギティス川などがあります。

また、南シェトランド諸島のリビングストン島にあるストルマ氷河は、この川にちなんで名付けられました。

歴史

ストルマ川は、古代から人々に知られていました。ヘシオドスの『神統記』には、河神の一人として言及されています。紀元前437年には、河口近くにアンフィポリスの街が建設されました。この地は、かつてクセルクセス1世が川を渡る際に9人の少年と9人の処女を生贄に捧げたという伝説にちなみ、「エネア・オドイ」（9人の道）と呼ばれていました。

紀元前480年には、アレクサンドロス1世がエネア・オドイでクセルクセスの残党を撃破しました。紀元前424年には、スパルタのブラシダス将軍がアンフィポリスを包囲・攻略し、ギリシャ半島へ進軍しました。1014年には、ベラシツァ山地の河岸でクレイディオンの戦いが行われました。

1913年の第二次バルカン戦争中、ギリシャ軍はクレスナ渓谷で包囲されかけました。ブルガリアはこの戦争で勝利しましたが、ブカレスト条約によって戦略的な要衝を失いました。第一次世界大戦では、ストルマ川流域はマケドニア戦線の一部となりました。第二次世界大戦中には、ストルマ川にちなんで名づけられた船がユダヤ難民をパレスチナに移送していましたが、黒海で沈没し、768名が犠牲になりました。

地名の由来

川の名前は、トラキア語のストリュモンに由来しており、これはインド・ヨーロッパ語族の「流れ」を意味する言葉からきています。ギリシア神話では、トラキアの王が川で溺死したという伝承にちなみ、「ストリュモン」は河の神、または溺死したトラキアの王の名前を指しました。前3世紀の古代ギリシャには、この名にちなんだ「ストリュモン」という人名も広く見られました。

まとめ

ストルマ川は、地理的、歴史的にも重要な役割を果たしてきた河川です。その流域は、豊かな自然と古代からの歴史的な出来事によって彩られています。環境保護の必要性が高まる現代において、ストルマ川のような自然の恵みを守り、後世に伝えていくことが重要です。

ギャラリー

[画像1の説明] ストルマ川の美しい風景写真

[画像2の説明] ケルキニ湖の自然豊かな風景

外部リンク

* ストリモン - Livius.org （英語）

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