ブルゴーニュ戦争

ブルゴーニュ戦争：ヨーロッパの勢力図を塗り替えた戦い

ブルゴーニュ戦争は、15世紀にヴァロワ家の分枝であるブルゴーニュ公と、フランス王の間で繰り広げられた一連の戦いです。スイス盟約者団も巻き込まれ、その後のヨーロッパの勢力図を大きく変えることになりました。

ブルゴーニュ公国の隆盛とフランス王国の対立

100年以上にわたり繁栄を続けたブルゴーニュ公国は、本拠地のフランシュ＝コンテやブルゴーニュ公領に加え、フランドルやブラバント、ルクセンブルクといった経済力のある低地諸国を領有していました。歴代のブルゴーニュ公は領土拡張政策を推し進め、特にアルザスとロレーヌの獲得に積極的で、南北に分断された領土の一体化を目指していました。

百年戦争においてブルゴーニュ公はイングランド側についたため、フランス王との対立は避けられませんでした。シャルル突進公のライン川沿いへの進出は、ハプスブルク家、特に神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世との摩擦を招きました。

戦争の勃発とスイスの参戦

1469年、チロル領主ジークムント大公は、スイスの拡大を防ぐため、アルザスの領地をブルゴーニュ公シャルルに抵当として譲渡しました。しかし、シャルルはジークムントの期待とは異なり、スイスへの攻撃には消極的でした。シャルルはバーゼルやストラスブールなどの都市に対し、代官ペーター・フォン・ハーゲンバッハを通じて通商禁止を実施しました。ハーゲンバッハの圧政は都市住民の反感を買い、都市はベルンに救援を求めました。

シャルルの拡張戦略は、1473年から1474年にかけてのケルン大司教に対する攻撃、ノイス包囲戦の失敗により頓挫しました。

1474年、ジークムントはスイスとの和平を画策し、「永久協定」と呼ばれる協定を締結しました。同時に、シャルルに譲渡した領地の買い戻しを試みましたが、拒否されました。同年4月30日、アルザスのブリザックで反ブルゴーニュ派に捕えられたハーゲンバッハが処刑されました。アルザスやスイスの都市、ジークムントは「対ブルゴーニュ同盟」を結成し、エリクールの戦いで勝利を収め、フランシュ＝コンテのジュラを征服しました。

1475年にはベルン軍がシャルルと同盟関係にあったサヴォイア公国のヴォー地方を征服し、破壊しました。ヴァレーでは、ジーベン・ゼンデンがベルン軍などの支援を受け、サヴォイア人を低地ヴァレーから駆逐しました。

1476年3月、シャルルは報復のため、グランソンへ進軍しました。そこはかつてブルゴーニュ軍が攻略した際、投降したスイス兵を見せしめのために処刑した場所でした。数日後、スイス同盟軍が到着し、シャルルはグランソンの戦いで大敗を喫しました。彼は大砲や多くの糧食、財宝を置き去りにして撤退しました。軍を再編成したシャルルでしたが、ムルテンの戦いでもスイス軍に敗北しました。

1477年、シャルルはナンシーの戦いでロレーヌ公ルネ2世率いるロレーヌ軍と交戦し、戦死しました。

戦争の影響とスイス傭兵の台頭

シャルルの死により、ブルゴーニュ公家は断絶しました。低地諸国は、シャルルの一人娘マリーと後の神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の結婚により、ハプスブルク家の領土となりました。ブルゴーニュ公領はフランスに帰属し、フランシュ＝コンテも一時フランスに併合されましたが、後にハプスブルク家へ譲渡されました。

ブルゴーニュ戦争におけるスイス軍の勝利は、彼らに「無敵」という名声をもたらしました。ヨーロッパ各地で槍兵の有用性が認識されるようになり、スイスを模範とした槍兵部隊が編成されるようになりました。スイス兵は、15世紀末には第一級の傭兵として認識されるようになりました。

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