ブルネイ憲法

ブルネイ憲法について

ブルネイ憲法（ブルネイけんぽう）は1959年9月29日に制定された、ブルネイ・ダルサラームの現行憲法です。この憲法は全87条から構成される成文憲法であり、公式言語としてマレー語と同様に英語でも作成されています。特に大きな特徴として、国王の権限が非常に強く影響を及ぼしていることが挙げられます。

歴史的背景

ブルネイの歴史は、1363年に初代国王ムハンマド・シャーがイスラーム教に改宗し、ブルネイ・スルターン国を築いたことに遡ります。1888年以降、ブルネイはイギリスの保護領となり、1906年からは内政権もイギリスが掌握しました。太平洋戦争時には日本に占領されましたが、戦後には再びイギリスの保護下に戻りました。

1954年には憲法草案が策定され、1959年にはアングロ・ブルネイ協定により一部内政権が回復された結果、同年に憲法が施行されました。当初はイギリスの影響が色濃く残り、外交権や防衛権は依然としてイギリスに委ねられていました。このため、ブルネイは独立の選択肢を何度も検討することになりました。

政治的な対立と反乱

当時、ブルネイには独立に向けた2つの主要な選択肢がありました。一つはイギリスからの独立であり、もう一つはイギリス領マラヤと共にマレーシア連邦に加盟する案です。この中で、ブルネイ人民党はボルネオ島内での独立を求める第三の選択肢を掲げました。

1962年に実施された郡評議会選挙ではブルネイ人民党が圧勝しましたが、国王との間に緊張が生まれ、最終的には反乱を引き起こすことになります。この反乱はイギリス軍によって鎮圧され、後には国王が単独での独立を決定する大きな要因となりました。反乱後、非常事態宣言が行われ、その影響が現在にまで及んでいます。憲法83条3項に基づく非常事態宣言下においては、国王が立法権を実質的に掌握する事態が生じました。

独立と憲法改正

1971年のアングロ・ブルネイ協定の改定で内政権が回復され、1984年に独立に至ります。この際も1959年憲法が引き継がれましたが、権力の集中はさらに進みました。独立後、国王は首相、国防相、財務相を兼任し、実質的な絶対君主制を確立しました。

憲法改正は主に国王の布告によって行われ、2004年の改憲では国王の権限が大幅に強化されました。結果として、国王は法の上位に立つ存在となり、行政の最高権限も有することが明文化されました。さらに、立法評議会も再開されましたが、その権限は制限され、公選制も導入されていないため、政治活動は限られています。

憲法の構成

ブルネイ憲法は全12編から成り立っており、宗教に関する規定や国王の権限、立法の手続きなどが詳細に記されています。特に第3条においてイスラーム教が国教とされ、前文や末尾にはアッラーフへの祈願が記載されています。また、公用語としてマレー語が定められ、英語版も公式とされていますが、内容に矛盾があった場合、マレー語版が優先されます。

このように、ブルネイ憲法は歴史的な経緯の中で形成され、特異な権力構造を持った憲法であることが特徴です。国王の強い権限とともに、多くの側面で立憲主義の原則が不充分であることも指摘されています。

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