ブルー (hàlのアルバム)

hàl 『ブルー』：セルフプロデュースと革新の交差点

2001年3月23日に株式会社ビクターエンタテインメントより発表されたhàlの通算4枚目となるオリジナルフルアルバム、それが『ブルー』（品番：VICL-60695）です。この作品は、ベストアルバムを対象外とすれば、現在のところ彼女がメジャーレーベルからリリースした最後のスタジオ録音作品として、そのキャリアにおいて重要な位置を占めています。

作品の特徴とサウンドメイク

『ブルー』は、hàl自身が初めてセルフプロデュースを手がけた楽曲が多数収められている点が大きな特徴です。これまでの作品では外部のプロデューサーやアレンジャーとの共同作業が中心でしたが、本作では自身の音楽的ヴィジョンをより直接的に反映させようとする意欲が感じられます。アルバム全体を通して、彼女自身の内面や感性がより色濃く反映されたサウンドアプローチが試みられており、アーティストとしての新たな境地を切り拓こうとする姿勢がうかがえます。

注目すべきコラボレーション：向井秀徳とZAZEN BOYS|ZAZEN_BOYS

本作に収録されている楽曲の中でも、特に注目すべきは「6階の少女」です。この楽曲は、当時ナンバーガールのフロントマンとして知られていた向井秀徳氏によって作詞・作曲・編曲全てが手がけられました。さらに特筆すべきは、この曲のレコーディングのためだけに特別に編成されたバンドが演奏を担当していることです。そのバンド名こそが「ZAZEN BOYS|ZAZEN_BOYS」（メンバーは向井秀徳氏と54-71のメンバー）でした。後に向井氏がナンバーガール解散を経て正式に始動させる自身のバンドが「ZAZEN BOYS|ZAZEN_BOYS」と名乗るきっかけとなったのが、まさにこの『ブルー』に収録された一曲だったのです。この楽曲における緊迫感のある演奏は、単なる一曲の提供にとどまらない、日本のロック史における偶然ながらも重要な接点として語られることがあります。

多彩なサウンドを織り成す収録曲

『ブルー』には、「6階の少女」以外にも多様な楽曲が収録されており、hàl自身のペンによる楽曲を中心に、様々な音楽家が制作に参加しています。主な収録曲は以下の通りです。

海の音 (作曲・編曲: hàl)
カフェ☆レーサー (作詞・作曲: hàl／編曲: 上田ケンジ)
人魚 (作詞・作曲: hàl／編曲: 渡辺善太郎)
モノクローム (作詞・作曲・編曲: hàl)
6階の少女 (作詞・作曲・編曲: 向井秀徳)
放課後バラード (作詞: hàl／作曲・編曲: 朝本浩文)
sweet cigarette (作詞: hàl／作曲: 渡辺慎／編曲: 上田ケンジ)
厭世観 (作詞・作曲・編曲: hàl)
キモチノユクエ (作詞・作曲: hàl／編曲: 渡辺善太郎)
花が散るころ (作詞: hàl／作曲・編曲: 朝本浩文)
オートバイ (作詞・作曲: 丸木戸定男／編曲: 高野勲)
空の声 (作詞・作曲: hàl／編曲: 四家卯大 & hàl)

これらの楽曲には、上田ケンジ、渡辺善太郎、朝本浩文、渡辺慎、丸木戸定男、高野勲、四家卯大といった実力派のミュージシャンやアレンジャーが名を連ねており、hàlの音楽世界に深みと彩りを加えています。特に、hàl自身が作詞・作曲・編曲全てを手がけた「モノクローム」や「厭世観」などは、セルフプロデュースという新たな試みの核をなす楽曲と言えるでしょう。

キャリアにおける位置づけ

『ブルー』は、前述の通り、ベストアルバム『travelling with hàl』（2002年）を除けば、メジャーレーベルから発表されたhàlの最後のオリジナルアルバムです。この作品で彼女が試みたセルフプロデュースというアプローチや、先鋭的なアーティストとのコラボレーションは、その後の音楽活動にも影響を与えた可能性があり、一区切りとしての意味合いを持つ重要な一枚と言えます。リリースから時を経た今も、その実験的なサウンドと内省的なリリックは、多くの音楽ファンに聴き継がれています。

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