ブルースパーティントン設計書

『ブルースパーティントン設計書』

『ブルースパーティントン設計書』は、アーサー・コナン・ドイルが執筆したシャーロック・ホームズシリーズの短編小説であり、この作品は全56作の中で39番目に発表されたものです。1908年12月号の英『ストランド・マガジン』や米『コリアーズ・ウィークリー』に掲載された後、1917年に発行された短編集『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』にも収められています。

あらすじ

1895年11月のある火曜日、兵器工場に勤務する青年カドガン・ウェストがロンドン地下鉄の線路脇で死亡しているのが発見されました。彼の服のポケットには、イギリスの最高機密である「ブルース・パーティントン型潜水艦」の設計書の重要な図面が入っていたのです。設計書は10枚中7枚が発見されていましたが、残りの3枚は行方不明で、これらが敵国に渡ってしまえば国家にとって深刻な危機が訪れることは明白でした。このため、政府は事態を深刻に受け止め、内部で騒然となりました。

木曜日、シャーロック・ホームズの兄マイクロフトがホームズを訪ねてきます。彼は政府の重要な役職に就いており、本来であれば事件の捜査を行うべき立場でしたが、忙しさのため弟にこの難事件を任せるために訪れたのです。新型潜水艦の設計図が奪われた理由、死体がどのように運ばれたのか、そして失われた3枚の図面の行方—これらは皆、急を要する問題でした。

警察は、ウェストが結婚を控え、金銭的な悩みから図面を盗んだが、悪事が露見し殺されたと考えていました。しかし、ホームズは捜査を進める中で、ウェストが実は図面を取り戻そうとしており、その途中で命を奪われたと確信します。その結果、敵のスパイによって殺害され、列車の屋根の上に置かれたのだと推理しました。

ホームズは、マイクロフトからの情報を元に、地下鉄に近い場所に住むスパイ、オーバーシュタインがこの事件の首謀者であると考えます。そして、彼は『デイリー・テレグラフ』の広告欄に出された奇妙な広告を発見し、これを手がかりに彼の策略を巡らせます。オーバーシュタインから指示を受け、図面を盗んだ実行犯がこの広告で連絡を取っていると推測し、ホームズはオーバーシュタインになりすまし、実行犯をおびき出すことにしました。

その結果、事件直後に急死した潜水艦局長の弟ヴァレンタイン・ウォルター大佐が現れます。彼は借金を抱え、破産の危機に瀕しており、兄の持つ兵器工場の鍵を密かに作って侵入し、図面を盗んだことを告白します。ウェストは彼の行動に気付き、追跡した結果、オーバーシュタインの住居に辿り着いたものの、命を落としてしまいました。

事件の結末

オーバーシュタインは設計図の中から特に重要な3枚を取り、ウェストの死体を利用して事件を隠蔽することを図りました。一方、ウォルターは自らの罪を長く隠し通すことができず、結局、兄の名誉のために自殺するという悲劇的な結末を迎えました。

ホームズはウォルターの自白をもとに、オーバーシュタインをおびき出すための偽の手紙を出すよう彼に促します。書かれた手紙に誘導され、指定された場所に現れたオーバーシュタインは、待ち構えていた警察に逮捕され、紛失した図面も無事に取り戻されました。

褒美と評価

事件解決後、ホームズはウィンザー城に招かれ、「さる高貴な女性」からエメラルドのタイピンを贈られました。この高貴な女性とは、当時の女王ヴィクトリアであり、物語の歴史的背景を象徴しています。ホームズは女王の後を継ぐエドワード7世とも関わりを持つことになり、その影響力を証明する結果となりました。

もう一度検索