ブレグジット EU離脱

ブレグジット EU離脱：国民投票を決定づけたキャンペーンの舞台裏

2019年に放送されたテレビ映画『ブレグジット EU離脱』（Brexit: The Uncivil War）は、2016年の英国EU離脱国民投票における離脱派キャンペーンの内幕を描いた作品です。ベネディクト・カンバーバッチが、このキャンペーンの中心人物であるドミニク・カミングスを演じ、緊迫感と重厚なドラマで話題を呼びました。

離脱派キャンペーン：カミングスの戦略

物語は、EU離脱派キャンペーンのリーダー選定から始まります。イギリス独立党議員ダグラス・カースウェルは、ロビイストのマシュー・エリオットを通じて、カミングスに協力を要請します。カミングスは当初、政治への復帰を拒否しますが、状況を変えるチャンスと捉え、キャンペーンに参加することに同意します。

カミングスは、イギリス独立党党首ナイジェル・ファラージや大口献金者アーロン・バンクスといった、過激な主張を行う勢力との連携を拒否します。彼らとの協調は、キャンペーンの戦略に悪影響を及ぼす恐れがあると判断したためです。しかし、エリオットは、ファラージやバンクスが持つ莫大な資金を無視できないことを指摘し、カミングスに移民問題を彼らに委ねようとする提案も行います。

カミングスは、データ分析会社アグリゲートIQのCEOザック・マッシンガムと協力し、アルゴリズムを用いたターゲティング広告戦略を立案します。この戦略は、投票に行かない有権者層をターゲットに、個人に合わせたメッセージを配信することで、彼らの投票行動を変化させることを目的としています。分析の結果、300万人の浮動票が存在することが判明し、残留派はこの存在に気づいていませんでした。

対照的に、残留派は従来型の戦略を採用します。首相報道官クレイグ・オリヴァー率いる「ストロンガー・イン」は、事実を基に雇用や経済問題を中心に訴求します。離脱派は感情に訴え、主権回復の必要性を強調します。双方とも、まだ態度を決定していない浮動層をターゲットに、激しいキャンペーンを展開します。

データ分析とターゲティング広告の活用

残留派はフォーカスグループ調査を行い、世論の動向を把握しようとします。一方、離脱派はアグリゲートIQのシステムを利用し、有権者一人ひとりに合わせたターゲティング広告を展開します。保守党のマイケル・ゴーヴとボリス・ジョンソンが離脱派支持を表明すると、キャンペーンはさらに激化します。

離脱派は「3億5000万ポンドとトルコ」というスローガンを掲げ、EUへの拠出金を国民医療サービス（NHS）に回すという主張を展開します。この主張は事実とは異なる部分を含んでおり、国民に不安を煽るものでした。

国民投票直前、残留派のジョー・コックス議員が刺殺されるという悲劇が起こります。この事件は、国民投票が社会に与えた影響の大きさを象徴的に示す出来事となりました。

キャンペーンの終焉とその後

国民投票の結果、EU離脱が決定します。カミングスは勝利を収めますが、そのキャンペーン手法は多くの批判を浴びることになります。

映画の最後には、アグリゲートIQとケンブリッジ・アナリティカによるターゲティング広告の規模や、その背後にあったロバート・マーサーの関与などが明かされます。マーサーは後にドナルド・トランプの選挙運動にも資金提供を行うことになります。また、ヴォウト・リーヴとリーヴ.EUは選挙法違反の疑いで捜査を受けることになります。

キャストと評価

本作はベネディクト・カンバーバッチの他に、ロリー・キニア、リー・ボードマン、リチャード・グールディングなど、実力派俳優たちが多数出演しています。批評家からも高い評価を受けており、Rotten Tomatoesでは80%の高評価を得ています。

『ブレグジット EU離脱』は、政治キャンペーンの裏側と、データ分析が政治に及ぼす影響をリアルに描き出した、見応えのある作品です。現代政治の複雑さと、その背後に潜む様々な問題について考えさせられるでしょう。

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