ブレット・イーストン・エリス

ブレット・イーストン・エリス

ブレット・イーストン・エリス（Bret Easton Ellis）は、1964年3月7日に生まれたアメリカ合衆国の作家です。その独特の冷徹かつ退廃的な筆致で知られ、1980年代後半から1990年代にかけて、ジェネレーションX世代の作家を代表する存在として位置づけられています。

来歴

エリスはカリフォルニア州ロサンゼルスに生を受け、同市内のシャーマン・オークス地区で幼少期を過ごしました。その後、バーモント州に位置するベニントン大学に進学し、そこで文学や創作について深く学びます。作家としてのキャリアは、大学在学中に執筆された初の長編小説『レス・ザン・ゼロ』（1985年発表）で鮮烈なスタートを切りました。

このデビュー作は、当時のアメリカ社会、特に南カリフォルニアの裕福な若者たちが送る、退廃的で空虚な日常を赤裸々に描き出し、瞬く間に大きな話題を呼びました。その成功により、エリスは同世代の作家であるジェイ・マキナニーらと並び称されるようになり、彼らの世代は、先行世代であるビート・ジェネレーションやロスト・ジェネレーションになぞらえ、時に「ニュー・ロスト・ジェネレーション」と称されることもありました。

主要な著作

エリスの作品は、現代社会に潜む病理、物質主義、暴力、空虚といったテーマを、独特の距離感を保った客観的な視点から描くことを特徴としています。その筆致はしばしば読者に衝撃を与え、特に過激な描写を含む作品は大きな論争を巻き起こしてきました。

彼の主要な小説作品としては、以下が挙げられます。

『レス・ザン・ゼロ』（Less Than Zero, 1985年）：デビュー作。南カリフォルニアの若者の退廃的な生活を描く。
『ルールズ・オブ・アトラクション』（The Rules of Attraction, 1987年）：架空の大学を舞台にした群像劇。
『アメリカン・サイコ』（American Psycho, 1991年）：1980年代末のウォール街のエリート青年による残虐な行為を描き、その過激な内容から出版当時大きな議論を呼んだ代表作。
『インフォーマーズ』（The Informers, 1994年）：短編集。ロサンゼルスを舞台にした様々な物語。
『Glamorama』（1998年）：ファッションモデルの世界を舞台にした、より実験的な作品。
『Lunar Park』（2005年）：ホラーの要素を取り入れ、作家「ブレット・イーストン・エリス」自身が登場するメタフィクション。
『帝国のベッドルーム』（Imperial Bedrooms, 2010年）：『レス・ザン・ゼロ』から25年後を舞台にした続編。

小説以外にも、ノンフィクション作品として『White』（2019年）を出版しており、自身の政治的見解や社会批評を展開しています。また、映画脚本もいくつか手掛けています。:

『ザ・ハリウッド』（The Canyons, 2013年）
『The Curse of Downers Grove』（2015年）
『Smiley Face Killers』（2020年）

映像化された作品

エリスの小説は、その鮮烈な描写やテーマ性から度々映像化されています。

『レス・ザン・ゼロ』（1987年）：マレク・カニエフスカ監督。
『アメリカン・サイコ』（2000年）：メアリー・ハロン監督。カルト的な人気を博した。
『ルールズ・オブ・アトラクション』（2002年）：ロジャー・エイヴァリー監督。
『Glitterati』（2005年）：ロジャー・エイヴァリー監督。日本未公開。
『インフォーマーズ セックスと偽りの日々』（The Informers, 2008年）：グレゴール・ジョーダン監督。エリス自身が脚本を担当した。

なお、エリスの人物像や創作世界に迫るドキュメンタリー映画『This Is Not an Exit: The Fictional World of Bret Easton Ellis』が2000年に制作されています。

外部リンク

公式ウェブサイト（英文）

ブレット・イーストン・エリスは、現代アメリカ文学において、社会の暗部や人間の内面に潜む虚無感を容赦なく描き出す作家として、今なお強い存在感を放っています。

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