ブレティニー条約

ブレティニー条約の概要

ブレティニー条約（Traité de Brétigny）は、1360年5月8日に起草され、同年10月24日に正式に批准されたもので、イングランド王エドワード3世とフランス王ジャン2世の間で締結されました。この条約は百年戦争の第一段階を終結させ、当時のヨーロッパにおけるイングランドの影響力を最大化させる出来事となりました。条件は、シャルトル近くのブレティニーで調整され、最終的にはカレーにて合意が成立しました。

背景

条約は1356年9月19日に発生したポワティエの戦いでジャン2世が捕らえられた4年後に締結されました。フランス国内では、パリにおけるエティエンヌ・マルセルとドーファン（後のフランス王シャルル5世）との間での権力争い、さらにはジャックリーの乱が発生するなど、交渉時のフランス側の立場は非常に厳しいものでした。

イングランド側も前年のロンドン条約での権利を守るため、厳しい交渉を強い、4月初めに始まった交渉は1か月以上にわたり難航しました。

条約の内容

ブレティニー条約に基づき、エドワード3世は以下の地域を獲得しました：ギュイエンヌ、ガスコーニュ、ポワトゥー、サントンジュ、オーニス、アジュネ、ペリゴール、リムーザンなど。これにより彼はフランス王に対して臣下の礼を取る義務がなく、自由に土地を支配する権限を持つようになりました。また、アキテーヌ公の称号は廃止され、新たにアキテーヌ卿の称号が与えられました。

一方でエドワード3世は、トゥーレーヌ公領、アンジュー伯領、メーヌなどを放棄し、フランス王位への請求も取り下げました。この条約は封建制度に基づく義務を軽減し、イングランド側の戦略的な目的であるアキテーヌ地域の領土拡大に寄与しました。さらに、オルダニーにおける権利も返還され、ヘンリー3世の時代に奪われた権利が回復されました。

ジャン2世の身代金は300万エキュに設定され、そのうち100万エキュの支払いで釈放されました。この条件により、フランス・フランが初めて発行されました。条約の履行保証として、ジャン2世の息子や兄弟、さらにイングランド側が要求した貴族や市民が人質として差し出されました。

条約は1360年10月24日にカレーにて正式に批准され、エドワード3世、エドワード黒太子、ジャン2世らがその履行を誓いました。この際、条約の各条項に条件が付けられ、違反があった場合に領土の割譲が無効となることが確認されました。

人質の脱走

条約締結後、ジャン2世はフランスへの帰還を果たし身代金の用意を進める中、彼の息子ルイ1世・ダンジューが1362年にイングランド領カレーから脱走する問題が発生しました。この事態を受けて、ジャン2世は再びイングランドに渡ることとなり、最終的に彼は捕虜のまま1364年に死去しました。その後、ドーファンのシャルルはシャルル5世として即位しました。

1369年、シャルル5世はエドワード3世がブレティニー条約を破棄したとして再び宣戦布告し、戦闘が再開されます。エドワード3世が1377年に亡くなるまでの間、イングランド軍はフランスにおいても大きな攻勢をかけ、南西部のボルドー近郊にも侵攻しました。

その後

ブレティニー条約は一時的に戦闘を止めることに成功したものの、結局は百年戦争のさらなる激化につながる結果となりました。この条約によって成立した休戦はわずか9年間で、その後フランス軍はイングランドとナバラ王国との戦闘に関与するようになりました。特に1364年のコシュレルの戦いでは、フランス軍のベルトラン・デュ・ゲクランが大勝を収めています。これにより、フランスの地域的な勢力も向上し、百年戦争はさらなる長期戦へと突入していくこととなります。

関連項目

• - トロワ条約

参考文献

• - Alfred H. Burne, 1955. The Crecy War: Military History of the Hundred Years War from 1337 to the Peace of Bretigny, 1360. Eyre & Spottiswoode.
• - Charles Guignebert, 1930. A Short History of the French People. New York: Macmillan and Company.
• - バーバラ・W・タックマン、徳永守儀 訳. 2013. 遠い鏡. 朝日出版社.

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