ブロンベルク条約

ブロンベルク条約（ヴェーラウ＝ブロンベルク条約）とは

ブロンベルク条約（ドイツ語: Vertrag von Bromberg）、またはブィドゴシュチュ条約（ラテン語: Pacta Bydgostensia）は、1657年11月6日にポーランド・リトアニア共和国の国王ヤン2世カジミェシュと、ブランデンブルク選帝侯兼プロイセン公フリードリヒ・ヴィルヘルムの間で締結された条約です。ヴェーラウ条約（1657年9月19日締結）も合意に含まれるため、ヴェーラウ＝ブロンベルク条約とも呼ばれます。

条約の概要

北方戦争における軍事援助の見返りとして、ポーランド王はプロイセン公国のホーエンツォレルン家を封臣から独立君主に昇格させました。また、ドラハイムとエルビングを抵当としてブランデンブルクに与え、ラウエンブルクとビュートーを封土としてホーエンツォレルン家に与えました。

この条約は1660年のオリヴァ条約で再確認され、国際的に承認されました。ポーランドはエルビングを保持しましたが、ラウエンブルクとビュートー、そしてドラハイムはブランデンブルク＝プロイセンに併合されました。プロイセンにおける主権は、後にホーエンツォレルン家のフリードリヒ1世がプロイセン王として戴冠する基礎となりました。

ヴェーラウ＝ブロンベルク条約は、第一次ポーランド分割直後の1773年9月18日に締結されたワルシャワ条約まで維持されました。ポーランドの外交政策における最大のミスであり、致命的な影響を与えたと言われる一方で、ポーランドが大きい利益を得たとする評価もあります。

条約締結の背景

プロイセン公国は、1525年のクラクフ条約によってポーランドの封土として成立しました。1563年には、ホーエンツォレルン家のブランデンブルク選帝侯家系でもプロイセン公国を継承できると定められました。1618年にホーエンツォレルン＝アンズバッハ家が断絶すると、ブランデンブルク選帝侯ヨハン・ジギスムントがプロイセン公国を継承しました。

北方戦争初期の1656年、ブランデンブルク＝プロイセンはケーニヒスベルク条約でスウェーデン帝国に臣従しましたが、ラビアウ条約でプロイセンを解放して独立国にさせました。その後、戦況が不利になったため、ブランデンブルク選帝侯フリードリヒ・ヴィルヘルムはポーランド側に接近し、ポーランド王ヤン2世カジミェシュにスウェーデンが与えた特権の承認を提案しました。これらの条件は、ヴェーラウとブロンベルクでの交渉によって決定されました。

ポーランドがブランデンブルク＝プロイセンとの同盟に興味を示したのは、対スウェーデン戦争を早期に終結させる必要があったためです。また、ハプスブルク家もフリードリヒ・ヴィルヘルムがスウェーデン側からポーランド側に鞍替えさせるべく、外交官を派遣して仲介にあたりました。

条約の内容

ブロンベルク条約は、主に以下の3つの部分で構成されています。

1. プロイセンの国体と継承、ブランデンブルク＝ポーランド同盟と軍事援助に関する22か条
2. 同盟と軍事援助の詳細を定めた6か条の「特別協定」
3. ヴェーラウ条約を改正して、ポーランド側の譲歩の詳細を定めたもの

プロイセンの国体

ブロンベルク条約により、プロイセン公フリードリヒ・ヴィルヘルムはポーランド・リトアニア共和国からも主権を承認されました。ただし、ホーエンツォレルン家の世襲主権が認められたのはプロイセン公国のみであり、エルムラントはポーランドへ返還されることとなりました。また、ブランデンブルク選帝侯家系ホーエンツォレルン家が断絶した場合、プロイセン公国はポーランド王が継承すると定められました。

軍事援助

ブランデンブルク＝プロイセンは、北方戦争においてポーランド・リトアニア共和国の対スウェーデン戦争に軍事援助を与えることを約束しました。

賠償と領土変更

ポーランドは援助の代償として、ブランデンブルク＝プロイセンにラウエンブルクとビュートーを封土として与えました。また、エルビングもブランデンブルク＝プロイセンに与えられましたが、後にポーランドが40万ターラーを支払うことで返還されることとなりました。さらに、ブランデンブルク＝プロイセンがポーランド側で参戦したことにより強いられた損害への賠償として、ドラハイム地域がブランデンブルクに引き渡されました。

条約の履行と影響

プロイセン議会は、特権の喪失を恐れて条約に反対しましたが、ホーエンツォレルン家はプロイセン公国における主権を通じて、1701年にプロイセンの王として戴冠することができました。

ラウエンブルクとビュートーは、1658年4月にブランデンブルク＝プロイセンに引き渡されました。1772年の第一次ポーランド分割の後、1773年のワルシャワ条約によってブロンベルク条約は取って代わられ、ラウエンブルクとビュートーはホーエンツォレルン家が断絶してもポーランド王は継承権を有さなくなりました。

ポーランドは1660年にスウェーデン軍が撤退した後、エルビングをブランデンブルク＝プロイセンから奪取しました。そして、ドラハイムも1663年にフリードリヒ・ヴィルヘルムが占領し、ポーランドの計画を阻止しました。

条約の評価

ロバート・I・フロストは、ヴェーラウ＝ブロンベルク条約はホーエンツォレルン家にとって地政学上で大きく得をし、富と名声を大きく上昇させたと評価しています。一方、ポーランドも戦争中にブランデンブルクの支援で大きい利益を得たとされています。

ユゼフ・アルノ・ウォダルスキは、ブロンベルク条約をポーランドの対プロイセン外交政策における最大のミスとみなし、ポーランドに致命的な影響を与えたとしています。歴史家のアンナ・カミンスカによると、ポーランドはブロンベルク条約でバルト海に対する影響力を失い、ポーランド・リトアニア共和国のヨーロッパにおける立場は弱体化したとされています。

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