プロイセン公国

プロイセン公国（ドイツ語: Herzogtum Preußen、ポーランド語: Księstwo Pruskie）は、1525年に宗教改革によってドイツ騎士団領が世俗化された結果、プロイセンに成立した公国です。英語では「Duchy of Prussia」、ポーランド語では「Księstwo Pruskie」とも呼ばれます。住民はドイツ語、ポーランド語（主にマズールィ周辺）、リトアニア語（主に小リトアニア周辺）を話す人々がいました。

歴史

ドイツ騎士団国末期の情勢

ドイツ騎士団国の住民の間でプロテスタントが広まるにつれて、ローマ・カトリック教会のドイツ騎士団による統治への不満が高まりました。ホーエンツォレルン家の分家出身であるドイツ騎士団総長アルブレヒト・フォン・ブランデンブルク＝アンスバッハには、不満を抑えつけるだけの軍事力がありませんでした。

ポーランド王国との戦争に敗北し、ポメサニア司教兼ザムラント司教ゲオルク・フォン・ポーレンツが1523年にルター派に改宗、部下にもプロテスタントを支持する者が続出しました。マルティン・ルターは1522年にヴィッテンベルクで、1524年にニュルンベルクでアルブレヒトを説得し、ドイツ騎士団国を世俗化して自ら統治する公国に改革するよう勧めました。アルブレヒトは急進的な解決策を模索するようになりました。

プロイセン公国の建国

1525年4月10日、アルブレヒトはドイツ騎士団長を辞任し、プロイセンの臣従宣誓を経てポーランド王ジグムント1世スタルィより「プロイセン公」に叙されました。プロイセン公国は史上初のプロテスタント国家となりました。

アルブレヒトはケーニヒスベルクに戻ると、改宗を公表し、ドイツ騎士団の団員にはプロイセン公への即位を公表しました。アルブレヒトの治世の終わりまでにプロイセンにおけるドイツ騎士団の団員は55人まで減りました。団員の多くは財産を保持するためにルター派に改宗してプロイセン貴族と結婚したか、カトリックから改宗せず神聖ローマ帝国に戻りました。

ドイツ騎士団国から公国への移行にあたって、行政上の変化は少なく、アルブレヒトは公式的にはポーランド王の封臣だったものの、プロイセンの自治は維持され、プロイセンには独自の軍、通貨、議会がありました。

キリスト教化の進展

1525年12月10日、プロイセン身分制議会によりプロイセン公国における教会法が定められたことで、プロイセン公国のルター派福音主義教会が成立しました。翌1526年3月1日、アルブレヒトはデンマーク王フレゼリク1世の娘ドロテアと結婚しました。

ドイツ騎士団は現地住民のキリスト教化という目標を表面的に達成したにすぎず、国内で教会を建てることは少なかったです。ゲオルク・フォン・ポーレンツ主教は1524年と1540年の二度にわたって異教の礼拝を禁じ、1524年1月18日には洗礼式で現地の言語しか使わないよう命じました。1525年の教会法により牧師による見舞いが定められ、プロイセン公国ではルター派が国教として定められたため、異教徒には刑罰が与えられました。

1525年の農民反乱

1525年、ザムラントで農民反乱が勃発しました。反乱は貴族による徴税、急激な宗教改革、そしてドイツ騎士団国の急な世俗化を理由としていました。アルブレヒトは帰国すると、自軍をもって農民を包囲、逮捕し、反乱の首謀者を処刑しました。

ドイツ騎士団国から公国への移行にあたって、貴族の構成は変化が少なかったですが、農民への支配は強まりました。

アルベルトゥス大学の設立

1544年、アルブレヒトはケーニヒスベルクのアルベルトゥス大学を創設しました。アルベルトゥス大学はプロイセンにおけるルター派牧師と神学者を育てる教育機関となりました。アルベルトゥス大学は1560年にポーランド王ジグムント2世アウグストより特権を与えられ、クラクフ大学と同じ自治権を与えられました。

継承問題

1568年にアルブレヒトが死去すると、15歳の息子アルブレヒト・フリードリヒがプロイセン公位を継承しました。アルブレヒト・フリードリヒが精神疾患により意志が弱まるにつれ、公国の統治も弱体化し、1577年にはブランデンブルク＝アンスバッハ辺境伯ゲオルク・フリードリヒがプロイセン摂政に就任しました。

ブランデンブルク＝プロイセンの成立

アルブレヒト・フリードリヒは1618年に死去しましたが、後継者となる男子がいずれも夭折したため、娘アンナの夫にあたるヨーハン・ジギスムントがプロイセン公国を継承しました。これによりブランデンブルク選帝侯領とプロイセン公国の同君連合が成立しました。

ブランデンブルクが神聖ローマ帝国の封土でプロイセン公国がポーランド王国の封土だったため、ブランデンブルクとプロイセンの物的同君連合は法律上不可能でした。しかし、実際の統治では合同が進んだため、一般的には合同したとみなされ「ブランデンブルク＝プロイセン」と呼ばれました。

フリードリヒ・ヴィルヘルムは1657年のヴェーラウ条約と1660年のオリヴァ条約によりポーランドからの完全独立を果たしました。

ポーランドの宗主権喪失は民族にかかわらず住民の間で歓迎されませんでした。というのも、プロイセンの住民はブランデンブルクの絶対主義がプロイセンに導入されることを恐れ、ポーランド王の宗主下に留まることを望んだためでした。

王国への昇格

1701年、ブランデンブルク選帝侯フリードリヒ3世（プロイセン公を兼任）は「プロイセンの王」に昇格しました。

1772年の第一次ポーランド分割でプロイセン王国がポーランド王領プロイセンを獲得すると、王領プロイセンのエルムラントと元プロイセン公国領はプロイセン王国領東プロイセン州に統合され、王領プロイセンの残りの部分はプロイセン王国領西プロイセン州になりました。

もう一度検索