ブロークン・コンソート

ブロークン・コンソート（英語: broken consort）とは、ルネサンス音楽が栄えた時期にヨーロッパで発展した独特な合奏形式の一つです。「混合コンソート」とも呼ばれるこのアンサンブルは、その定義において、二種類以上の楽器を用いる点に大きな特徴があります。例えば、ヴァイオリンなどの弦楽器群とリコーダーなどの管楽器群が混ざり合って演奏されるような形態を指します。これに対し、リュート属やヴァイオル属のように、同属の楽器のみで構成されるアンサンブルは「ホール・コンソート（whole consort）」と呼ばれ、ブロークン・コンソートと明確に対比されます。

この形式は、エリザベス1世が統治した時代のイングランドで特に隆盛を迎えました。当時の典型的なブロークン・コンソートの編成は、非常に具体的かつ特徴的でした。具体例としては、

リュート、シターン、バンドーラといった撥弦楽器が3つ
高音域を担当するトレブル・ヴァイオルと低音域を担当するバス・ヴァイオルといった弓奏楽器が2つ
* そして、リコーダーまたはフラウト・トラヴェルソ（横笛）の管楽器1つ

という組み合わせが挙げられます。このような多様な音色を持つ楽器の組み合わせは、エリザベス朝の社会で大変な人気を博し、器楽演奏のみならず、声楽の伴奏にも頻繁に用いられました。

ブロークン・コンソートが16世紀のイングランドで独自の発展を遂げたことから、「イングリッシュ・コンソート（English consort）」という別名でも知られています。また、当時の主要な作曲家であるトマス・モーリーの名にちなんで、「モーリー・コンソート（Morley consort）」と呼ばれることもあります。

興味深い点として、「ブロークン・コンソート」という名称自体は、実は20世紀になってから用いられるようになった比較的新しい呼称です。この名前は、単一の旋律を基に複数の変奏（ディヴィジョン）を作り出す作曲技法が「ブロークン・ミュージック（broken music）」と呼ばれていたことに由来すると考えられています。さらに、17世紀においては、「コンソート」という言葉が使われた場合、一般的にはホール・コンソートではなく、このブロークン・コンソートを指すのが普通でした。この点は、現代における「コンソート」という言葉の一般的な理解とは逆転していると言えます。

特にブロークン・コンソートのために作曲された楽曲も、今日まで複数伝えられています。その中でも特筆すべきは、1599年にトマス・モーリーによって編纂・出版された曲集『コンソートのレッスン第1巻（First Book of Consort Lessons）』です。この曲集は、ブロークン・コンソートという形式を代表する作品群であり、「モーリー・コンソート」という呼称が生まれるきっかけとなりました。モーリー以外にも、フィリップ・ロセターなどがこの形式の作品を残しています。また、ウィリアム・リートンやリチャード・アリスンといった作曲家は、自らの宗教音楽において、ブロークン・コンソートの編成を伴奏として採用しました。

20世紀に入り、古楽器演奏への関心が高まる中で、ブロークン・コンソートも再び注目されるようになりました。アメリカのシドニー・ベックは、この合奏形式の現代における復興に大きく貢献した人物であり、特にモーリーの『コンソートのレッスン』の最初の現代譜を出版するなど、その演奏機会の復活に尽力しました。イギリスの著名なリュート奏者であるジュリアン・ブリームも、この復興運動の重要な担い手の一人です。現代において、ブロークン・コンソートの演奏を専門とし、国際的に高い評価を得ている古楽器アンサンブルとしては、ボルチモア・コンソートが挙げられます。彼らの活動は、この歴史的な合奏形式の豊かな響きと魅力を現代の聴衆に伝えています。

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