プジョー・1007

プジョー1007：斬新なスライドドアと個性的なスタイリングのコンパクトカー

プジョー1007は、2004年にプジョーが発表した3ドアのコンパクトカーです。このモデルは、プジョー車名としては初めてゼロを2つ並べた車名であり、日本では「イチマルマルナナ」の愛称で親しまれました。英語圏では「ten-oh-seven」、フランスでは「mille-sept」と呼ばれていました。

1007の最大の特徴は、前席左右両側に装備された電動スライドドアです。この電動スライドドアは、狭い場所や坂道での乗り降りを容易にするだけでなく、車両デザインに独特の個性をプラスしています。従来のヒンジ式ドアに比べて、乗り降りの利便性を大幅に向上させていました。この革新的なアイデアは、当時のコンパクトカー市場において非常に斬新なものでした。

パワートレインは、プジョー206と共通のエンジンが搭載されました。ガソリンエンジンは1.4Lと1.6LのSOHCとDOHCエンジンが用意され、ディーゼルエンジンは1.4Lが設定されていました（日本未導入）。トランスミッションには、プジョー初となるセミオートマチック機構を持つ5速マニュアル「2トロニック」が採用されました。この2トロニックは、クラッチペダルが不要なため、オートマチック限定免許で運転できる点が大きな魅力でした。ただし、クリープ現象がないため、坂道発進時には注意が必要でした。

スタイリングは、フロントとリアのデザインをプジョーの社内デザイン部が、サイドのデザインをピニンファリーナが担当するという、ユニークな体制で開発されました。そのため、プジョーらしいフロントマスクと、イタリアのスタイリングハウスらしい洗練されたサイドビューが融合した、独特の個性を有していました。

さらに、カスタマイズ性も魅力の一つでした。カメレオキットと呼ばれるオプションパーツを使用することで、ドアトリムなど内装の一部をユーザーの好みに合わせて交換することが可能でした。このオプションにより、個性を反映した自分だけの1007を手に入れることができました。

日本市場においては、2006年2月にガソリンエンジン仕様が発売されました。しかし、欧州仕様の全幅が1,686mmであるのに対し、日本の測定方法では1,710mmとなり、3ナンバー登録扱いとなりました。この点が、日本での販売台数に影響を与えた可能性があります。

残念ながら、2008年にはイギリスと日本での販売が中止され、右ハンドル車の生産が終了しました。翌2009年には左ハンドル車の生産も終了し、1007の歴史に幕を閉じました。販売期間は短かったものの、電動スライドドアという革新的な機構と、個性的なデザインによって、多くの自動車ファンに記憶されるモデルとなりました。

1007は、トヨタ・ポルテ/スペイドのような、スライドドアを採用したコンパクトカーの先駆け的な存在と言えます。しかし、ポルテ/スペイドが左側のみスライドドアを採用しているのに対し、1007は両側スライドドアを採用しており、その点で大きな違いがあります。プジョー1007は、その短い販売期間にも関わらず、自動車史に独特な足跡を残したモデルと言えるでしょう。

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