プジョー・604

プジョー604：フランスが誇る大型高級車の栄光と影

プジョー604は、1975年から1985年にかけてフランスの自動車メーカー、プジョーが製造した大型高級乗用車です。戦前の601以来となる、戦後初の6気筒エンジンを搭載したモデルとして、当時のフランス自動車業界において大きな注目を集めました。

洗練されたデザインと優れた走行性能

604のデザインは、イタリアのカロッツェリア、ピニンファリーナの手によるものです。スクエアで端正なスタイリングは、時代を超越した美しさを感じさせます。搭載された2700ccのV型6気筒SOHCエンジン（PRVエンジン）は、スムーズな走りを実現し、504譲りの優れたサスペンションシステムは、快適な乗り心地と確かなハンドリングを提供しました。パワーステアリングも秀逸で、運転の快適性を高めていました。フランス車特有のソフトなシートも、長時間のドライブでも疲れにくい設計となっていました。

市場での評価と日本での展開

しかし、604はメルセデス・ベンツやBMWといったドイツ勢のような高いブランド力を持たないため、国際市場においては、その優れた性能にもかかわらず、十分な評価を得ることができませんでした。同時期の競合車種であるルノー30やボルボ264と比較しても、販売台数は伸び悩みました。

日本市場においても、604はマイナーな存在でした。1975年の東京モーターショーに参考出品された後、翌年から西武自動車販売が輸入販売を開始しました。シトロエンCXよりも知名度は低く、広く一般に知られることはありませんでした。しかし、セゾングループ総帥の堤清二氏が愛車として愛用していたことなど、一部では知られた存在でした。

生産終了とその後

1985年に生産が終了した604の後継モデルである605が登場するまでの間は、プジョー505のV6モデルがその市場を担うことになります。604は、その優れた性能と洗練されたデザインにも関わらず、ブランド力の不足や市場の競争激化といった要因により、短い歴史に幕を閉じました。しかし、フランス自動車史において重要な位置を占めるモデルであることは間違いありません。

まとめ

プジョー604は、優れた走行性能と洗練されたデザインを備えた大型高級車でしたが、ブランド力の不足が市場での成功を阻む結果となりました。日本においてもマイナーな存在でしたが、一部の愛好家には高く評価されています。この車は、フランス自動車産業の技術力の高さを示す一方、ブランド戦略の重要性を改めて認識させるモデルと言えるでしょう。 604は、そのスタイリングや乗り心地の良さから、現在でもコレクターズアイテムとして人気があります。当時を知る人々にとっては、ノスタルジーを誘う存在であり続けるでしょう。

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