プスワン

プスワン：西遼を統べた女性

プスワン（普速完）は、西遼（カラ・キタイ）の第2代皇帝である仁宗耶律夷列（イリ）の妹にあたる人物です。彼女は、兄の崩御後、幼い甥を補佐するために称制となりました。

称制への経緯

紹興13年（1163年）、兄である仁宗が若くして崩御しました。仁宗の次男である耶律直魯古（チルク）はまだ幼かったため、仁宗の遺詔により、プスワンが称制となり、甥である耶律直魯古を補佐することになりました。これは、皇位を継承できる年齢に達していない幼い皇帝を、血縁の近い者が補佐するという、当時の政治状況下では比較的よく見られる措置でした。

権力と悲劇

しかし、プスワンの治世は平穏なものではありませんでした。彼女は夫である蕭朶魯不（ショウダルブ）の弟、蕭朴古只沙里（ショウボクコシシャリ）と姦通し、権力を掌握しようとします。邪魔になった夫の蕭朶魯不を東平王として左遷した上で暗殺するという大胆な行動に出ました。しかし、このことが彼女の破滅を招きます。

子が殺害されたことを知った蕭朶魯不の父、蕭斡里剌（ショウアツリラ）は、崇福14年（1177年）に兵を率いて宮殿を取り囲みました。そして、プスワンと姦通相手である蕭朴古只沙里を射殺し、復讐を果たしました。これにより、プスワンの治世は終わりを告げ、西遼の政治情勢は大きく変化することになります。

年号

プスワンが称制していた期間に使用された年号は以下の通りです。

崇福：1163年 - 1177年

参考文献

『遼史』巻30
* 藤枝晃「西遼」『アジア歴史事典』5巻（平凡社, 1960年）、208-209頁

プスワンは、西遼という国家において、女性でありながら権力を握り、政治を主導した特異な存在です。しかし、その権力掌握の過程で犯した罪により、悲劇的な最期を迎えることとなりました。彼女の生涯は、権力闘争の激しさと、その中で生きる人々の運命の儚さを物語っていると言えるでしょう。

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