称制

称制（しょうせい）とは

称制とは、君主が崩御した後、次代の君主となるべき皇太子や、先代君主の后が、正式に即位することなく政務を執り行うことを指します。日本では飛鳥時代に中大兄皇子（後の天智天皇）と鸕野讚良皇后（後の持統天皇）の2例が知られています。

日本における称制の特徴

日本の『日本書紀』における記述では、称制を行った2人は事実上天皇と同等の権力を持っていたとされています。摂政との違いは、摂政の場合、天皇が同時に存在しているのに対し、称制の場合は天皇が不在である点です。称制を行う人物が、事実上の天皇、もしくはそれに準ずる存在として扱われます。

中国における称制

称制は元々中国の言葉で、先王崩御後に幼い新王が即位した場合、太后（母后）が政治の実権を握り代行することを指します。これは「垂簾の政」として知られています。中国の称制では、必ず幼い君主が同時に存在する必要があり、日本の称制とは異なります。

日本における称制の事例

日本の歴史において「称制」とされているのは、以下の2例です。

中大兄皇子（後の天智天皇）：斉明天皇崩御後、皇太子として即位せずに政務を執りました。この間、中大兄皇子は「中皇命（なかつすめらみこと）」と呼ばれていたとされています。中国の称制とは異なり、皇太子が実権を握っていましたが、名目上の上位者として先帝の后（孝徳天皇の皇后・間人皇女）を立てていたため、形式上「称制」という名称が用いられたと考えられています。668年に正式に即位し、天智天皇となりました。
鸕野讚良皇后（後の持統天皇）：夫である天武天皇崩御後、息子の草壁皇子を支えるために政務を執りました。草壁皇子の早世後、孫の珂瑠皇子（後の文武天皇）が成人するまでの間、中継ぎとして690年に持統天皇として即位しました。彼女の称制は、自らの血統を確実なものとするためであり、律令国家体制の確立に大きく貢献しました。

称制と見なされるその他のケース

『日本書紀』や『続日本紀』には、正式に称制とは記述されていないものの、同様の状況が見られるケースがいくつか存在します。

神功皇后の摂政：仲哀天皇崩御後、応神天皇が幼少であったため、神功皇后が摂政として政務を執ったとされています。ただし、『日本書紀』では「摂政」という用語が用いられており、「称制」とはされていません。
飯豊青皇女の執政：清寧天皇崩御後、後継者が定まらなかったため、飯豊青皇女が政務を執ったとされています。
阿閇皇女の執政：文武天皇崩御後、首皇子が幼少であったため、阿閇皇女が一時的に政務を執りました。しかし、2ヶ月後には元明天皇として即位したため、称制としての実質はほとんどなかったと考えられています。

まとめ

称制は、君主不在という特殊な状況下において、政治を円滑に進めるための制度でした。日本においては、天皇に準ずる権力を持った人物が政務を執り行うという点で、中国の称制とは異なる独自の発展を遂げました。

関連語句
天智天皇
* 持統天皇

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