プチーチュカ

プチーチュカ：旧ソ連の宇宙往還機、ブラン計画の翼

「プチーチュカ」（Птичка）という愛らしい名前は、ロシア語で「小鳥」を意味します。この非公式な愛称で呼ばれたのは、旧ソ連が推進した宇宙往還機、ブラン計画において建造された2機目のオービターです。正式には「ブラン 1.02」または単に「1.02」として知られています。また、「嵐」を意味する「ブーリャ」（Буря）という非公式名称でも呼ばれることがありました。この「プチーチュカ」という呼び名は、ブラン計画で開発された全てのスペースシャトル型オービターに対する、広範な非公式ニックネームとしても用いられていました。

建造とその終焉

ブラン計画における2番目のオービターであるプチーチュカの組み立て作業は、1988年に開始されました。順調に進められていた建造計画でしたが、1993年にブラン計画自体が正式に中止されたことにより、完成を見ることはありませんでした。最終的な完成度は95%から97%に達していたとされており、残されていたのは一部の電子部品の取り付け作業だけでした。あと一歩というところで、その運用が実現することなく開発が終了してしまったのです。

実現しなかった飛行計画

プチーチュカには、詳細かつ野心的な飛行計画が立てられていました。1989年当時の計画では、まず1991年に1～2日間の無人試験飛行を実施。続いて1992年には、7～8日間にわたる2度目の無人飛行を行い、軌道上での作業能力や宇宙ステーションへの接近試験を行う予定でした。

しかし、1991年にはこの計画が変更され、より複雑なシナリオが描かれます。変更後の計画では、1991年12月に7～8日間の無人飛行を兼ねた試験ミッションを行うことになりました。このミッションでは、国際宇宙ステーションの前身である宇宙ステーション「ミール」のクリスタルモジュールとの自動ドッキングが予定されていました。ドッキング後、ミールに滞在している宇宙飛行士がプチーチュカへ移動し、約24時間にわたって遠隔操作装置を含むシャトル内の様々なシステム試験を実施することになっていました。試験を終えた後、プチーチュカはミールから自動アンドッキングを行い、再び無人での軌道飛行を続けます。

さらに、この複雑な計画では、別の有人宇宙船であるソユーズTM-101とのドッキングも予定されていました。ソユーズとのドッキングが成功すると、今度はソユーズの宇宙飛行士がプチーチュカへ移動し、約24時間にわたりシャトル内部での作業を行うという、非常に高度な連携ミッションが計画されていました。これらの有人作業が完了した後、プチーチュカはソユーズから自動アンドッキングを行い、地上への帰還、着陸へと向かう段取りでした。これらの計画は、プチーチュカが単なる試験機ではなく、将来的に有人宇宙活動における重要な役割を担う可能性を示唆していましたが、計画中止により全て幻となりました。

現在の所在

未完成のままとなったプチーチュカは、現在カザフスタン共和国の所有となっています。広大なバイコヌール宇宙基地内にある「MIKビルディング」と呼ばれる大規模な組み立て・整備施設の中に、静かに保管されています。かつて壮大な宇宙飛行が計画されたこの機体は、宇宙開発の歴史における一つの大きな節目と、計画中止によって失われた可能性を示す遺産として、そこに存在しています。

参考文献や外部リンクとして、ソ連版スペースシャトルの将来運用計画に関するアーカイブなどが存在し、プチーチュカを含むブラン計画の詳細を知る手がかりとなっています。

もう一度検索