プライドのパージ

プライドのパージとは

1648年12月6日、イングランドで発生した「プライドのパージ」は、清教徒革命（イングランド内戦）の最中に、ニューモデル軍が主導したクーデターです。この事件は、下院における多数派であった長老派議員を追放し、少数派の独立派が主導権を握るきっかけとなりました。

クーデターは、トマス・プライド大佐の指揮によって実行されたため、彼の名にちなんで「プライドのパージ」と呼ばれています。この事件は、その後のイングランドの政治体制を大きく変えることとなり、急進的な政治展開へと進むことになりました。

クーデターに至るまでの経緯

第二次イングランド内戦終結後、長期議会はチャールズ1世との交渉を再開しようとしました。これに対し、ニューモデル軍は激しく反発しました。

軍幹部が所属する独立派は、議会との交渉に不満を持つ平等派と手を結び、軍司令官トーマス・フェアファクスにロンドン進撃を促しました。また、議会に対し、交渉への抗議文を送りつけるなど、軍と議会の対立は深まっていました。

一方、オリバー・クロムウェルは、スコットランドとの和睦後、王党派の残党を鎮圧するため北方へ向かっていました。彼は、政局を見極めるために敢えて中央を離れていたと推察されています。

彼は、従兄弟宛の手紙の中で、議会が軍や国民に害をなすならば、武力による抵抗も辞さないという考えを示唆していました。


長老派が主導権を握る議会は、軍の抗議を無視し、国王との交渉を進めようとしました。これに対し、フェアファクスは軍の政治介入を決断し、部下にチャールズ1世を逮捕させ、部隊をロンドンへ進軍させました。

それでも下院は国王との交渉を継続しようとしたため、軍はより強硬な手段に出ることを決意しました。

クーデターの実行

12月6日朝、トマス・プライド大佐が率いる部隊は下院議場に乱入し、長老派議員を多数逮捕・追放しました。逮捕・拘禁された議員は54人、追放された議員は94人に上り、自ら出席を拒否した議員も20人いました。

これにより、下院は60人以下の議員しか残らず、残った議員たちだけで「ランプ議会」を形成しました。

クロムウェルはクーデターの計画を知らなかったとされていますが、フェアファクスからの手紙を受け取った後、ロンドンに到着し、クーデターを承認しました。

クーデター後の展開

邪魔な長老派を排除した軍は、ランプ議会と連携し、国王チャールズ1世の処刑へと突き進みます。1649年1月6日、上院の反対を押し切り、下院だけで国王を裁く特別裁判所の設置を可決しました。

同年1月20日から27日まで裁判が行われ、1月30日にチャールズ1世は処刑され、イングランド共和国が誕生しました。


しかし、ランプ議会は民意を反映していないという問題を抱えていました。軍の介入による多数派排除という経緯も、ランプ議会と共和国の正当性を揺るがす要因となりました。

処刑されたチャールズ1世に同情する国民も多く、共和国は孤立した状態に置かれました。

その後、共和国は王政、上院、枢密院などを廃止し、下院だけのランプ議会が単独で政治を執り行いました。クロムウェルら軍と連携しながら、苦しい政権運営を余儀なくされたのです。

まとめ

プライドのパージは、イングランド内戦における重要な転換点でした。軍の政治介入によって、それまでの政治体制が大きく変化し、より急進的な政治へと向かうこととなりました。しかし、その過程で生まれた共和国は、多くの問題を抱え、不安定な状況の中で運営されていくことになったのです。

参考文献

今井宏『クロムウェルとピューリタン革命』清水書院、1984年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
* 清水雅夫『王冠のないイギリス王 オリバー・クロムウェル―ピューリタン革命史』リーベル出版、2007年。

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