長期議会

イギリスにおける短期議会と長期議会：王権と議会、そして内戦

17世紀イングランドにおいて、国王チャールズ1世と議会との対立は、イギリスの歴史を大きく変容させる出来事でした。その中心的役割を担ったのが、短期議会と長期議会です。両議会の召集背景、活動、そして終焉に至るまでの経緯を詳細に見ていきましょう。

短期議会：国王専制とスコットランドとの戦争

1629年、チャールズ1世は議会を解散し、専制政治を敷きました。この専制政治下で、国王は自身の権力を強化し、議会を通さずに政策を進めました。しかし、宗教政策をめぐる対立から、1639年にはスコットランドとの戦争（第1次主教戦争）が勃発。財政難に陥ったチャールズ1世は、戦争費用を捻出するために1640年4月、11年ぶりに議会を召集しました。しかし、国王と議会の対立は深く、わずか3週間で解散されたこの議会は、のちに「短期議会」と呼ばれることになります。

長期議会：改革と内戦

短期議会解散後、スコットランドとの戦争（第2次主教戦争）はさらに激化し、敗北したチャールズ1世は、戦費調達とスコットランドへの賠償金支払いのために、同年11月3日に再び議会を召集しました。これが「長期議会」です。

長期議会は、約500名の庶民院議員を中心とした議会で、反国王派の有力議員たちが中心となり、国王専制政治への抵抗を強めました。彼らは、まず専制政治の象徴的存在であったストラフォード伯やカンタベリー大主教を逮捕、処刑しました。その後、議会を少なくとも3年に1回召集すること、国王の同意なしの課税禁止、弾圧機関の廃止など、一連の改革法案を成立させました。

しかし、イングランド国教会の改革をめぐる議論では、議会内部に亀裂が生じ始めました。穏健派と急進派の対立は深まり、アイルランド反乱の勃発も事態をさらに複雑にしました。議会は国王の専制政治を糾弾する「大諫奏」を採択しましたが、チャールズ1世はこれを拒否、両者の対立は決定的となりました。

イングランド内戦

国王派と議会派の対立はついに武力衝突へと発展し、1642年、イングランド内戦が始まりました。初期は国王派が優勢でしたが、クロムウェルの率いる議会軍の活躍により、1646年には議会派が勝利しました。

残部議会（ランプ議会）と共和国の成立

内戦終結後も、議会派内部では長老派と独立派の対立が続きました。1648年、独立派は軍事クーデターによって長老派を議会から排除し、「プライドのパージ」と呼ばれる事件を起こしました。こうして独立派が議席を独占した議会は、「残部議会」または「ランプ議会」と呼ばれます。

ランプ議会は1649年、チャールズ1世を処刑し、イングランド共和国を成立させました。しかし、共和国は内部対立や財政問題に苦しみ、1653年、クロムウェルは軍隊を率いてランプ議会を解散しました。

長期議会の終焉と王政復古

クロムウェルによる長期議会の解散後も、元議員たちは議会の正当性を主張し続けました。その後、ベアボーンズ議会を経てクロムウェルは護国卿となりましたが、彼の死後、混乱の末にランプ議会が一時復活しました。しかし、王政復古の機運が高まる中、1660年2月、長老派議員が復帰し、長期議会が再開されました。しかし、それは王政復古への準備期間に過ぎず、わずか1ヶ月後に解散。そして、チャールズ2世が帰還し、王政復古が実現しました。

短期議会と長期議会は、イギリスにおける王権と議会闘争の重要な節目であり、イングランド内戦、共和国成立、そして王政復古へと続く歴史的転換期を象徴する存在です。これらの出来事は、近代イギリス国家の形成に大きな影響を与えました。

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