プラウダ (真実)

[プラウダ]：1969年のプラハから発信された真実の叫び

[1969年]]、フランスと西ドイツが共同制作した映画『プラウダ]』。これは、[[ジャン＝リュック・ゴダール、ジャン＝アンリ・ロジェ、ポール・ビュロンらからなる映画集団「ジガ・ヴェルトフ集団」による作品であり、彼らの第三作目に当たります。

本作は「プラハの春」と呼ばれる時代、ソ連軍の介入直後のチェコスロヴァキア、プラハで撮影されました。1968年の「二千語宣言」発表やソ連の軍事介入という歴史的転換期を経て、まさに社会主義体制が揺らぐ緊迫した状況下における貴重な記録と言えるでしょう。

映画は、チェコスロヴァキアの日常風景を短いショットで切り取り、モンタージュによって構成されています。「ウラジミール」と「ローザ」という二人のナレーションが、それらの映像を分析し、社会構造への批判を展開していくのが特徴です。

特に注目すべき点は、当時チェコ・ヌーヴェルヴァーグを代表する女性映画監督、ヴェラ・ヒティロヴァへのインタビューシーンです。ゴダールはヒティロヴァに対して、体制への迎合を暗に批判する発言を行い、ヒティロヴァはそれに答えるという緊迫したやり取りが収録されています。また、プラハの映画監督イヴァン・パッセルも登場し、ゴダールと対立する場面も見られます。パッセルは後にアメリカに亡命するのですが、この映画は、その直前の彼の姿を記録した貴重な資料となっています。

『プラウダ』というタイトルは、ロシア語で「真実」を意味する言葉です。これは、ソ連共産党の機関紙名であると同時に、ジガ・ヴェルトフが手掛けたドキュメンタリー映画シリーズ『キノ・プラウダ』にも由来しており、ジガ・ヴェルトフ集団が追求した「シネマ・ヴェリテ」というドキュメンタリー手法とも深く関わっています。

ゴダールとジガ・ヴェルトフ集団は、この作品を通じて、アメリカ帝国主義とソ連のスターリニズムという二つの体制の共存関係における「真実」を、1969年のプラハという社会情勢の中に探ろうとしていました。

映画の内容は、チェコスロヴァキアの日常生活を映し出した短いショットが中心ですが、それらは学生、労働者、農民、兵士など、様々な社会階層の人々の日常を映し出し、それぞれが置かれている状況を浮き彫りにします。また、経済主義、スターリン主義、官僚主義、西欧主義など、当時の社会問題を具体的に分析する場面も含まれています。

さらに、プラハの街中を走る赤い市電のクローズアップなど、印象的な映像と共に、マルクス・レーニン主義的な視点から「間違った映像」を「正しい音響」によって修正する方法が提示されます。そして、階級闘争、生産闘争、科学実験といった、社会変革のための具体的な行動への呼びかけで締めくくられています。

『プラウダ』は、単なるドキュメンタリー映画ではありません。当時の社会情勢に対する鋭い批判と、実験的な映像表現を融合させた、ゴダール作品の中でも特に実験的で政治的な作品であり、歴史的にも貴重な記録となっています。日本では、1971年に公開され、その後も、チェコを始めとする様々な場所で上映され続けています。58分のカラー作品で、16mmフィルム、アスペクト比1:1.37で撮影されています。監督、脚本、撮影、録音、編集はすべてジガ・ヴェルトフ集団が担当し、ヴェラ・ヒティロヴァ、イヴァン・パッセル、ジャン＝リュック・ゴダールが出演しています。製作はクロード・ネジャール、製作会社は欧州映画ラジオテレビ放送センター(C.E.C.R.T.)です。

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