プラユット・チャンオチャ

プラユット・チャンオチャ（Prayuth Chan-ocha）は、タイ王国の軍人、政治家であり、第37代首相を務めた人物です。愛称は「トゥーおじさん」として親しまれています。

軍事クーデターと権力掌握

2014年、プラユットは陸軍司令官として戒厳令を発令。その直後、「国家平和秩序評議会（NCPO）」を組織し、軍事クーデターを断行しました。このクーデターにより、当時の文民政権は崩壊し、プラユットはNCPO議長としてタイの実権を掌握しました。この背景には、タクシン元首相派と反タクシン派の対立が激化していたことが挙げられます。軍事政権下で、プラユットは首相も兼任し、強権的な政治姿勢を示しました。

首相再任と強権的な統治

2019年、総選挙を経て民政復帰しましたが、プラユットは国民国家の力党を率いて首相に再任されました。しかし、その統治手法は権威主義的であると批判され、言論弾圧やデモに対する強硬な姿勢が問題視されました。特に、2020年には若者を中心に王室改革を求める大規模なデモが発生しましたが、プラユット政権は「不敬罪」を適用するなどして徹底的に取り締まりました。新型コロナウイルス対策として集会禁止命令を出し、デモを弾圧したことも批判を浴びました。

任期を巡る混乱

2022年には、プラユットの首相任期が憲法で定められた8年を超えているのではないかという問題が浮上しました。野党勢力は憲法裁判所に提訴し、プラユットは一時的に職務停止となりました。しかし、憲法裁判所は任期の起算点を2017年の現行憲法施行日とする判断を示し、プラユットの首相としての任期は継続されることとなりました。しかし、この一連の出来事は、プラユット政権の不安定さを浮き彫りにしました。

政界引退

2023年5月の総選挙では、与党連合が敗北し、プラユットの続投は事実上不可能となりました。その後、同年7月に政界引退を表明し、8月にセター・タウィーシンが首相に任命され、プラユット政権は終焉を迎えました。

プラユットの政治姿勢は、タイ社会に大きな影響を与えました。軍事クーデターによる政権掌握から、強権的な統治、そして任期を巡る混乱まで、その政治キャリアはタイ現代史における重要な出来事として語り継がれるでしょう。

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