プリア・コー

プリア・コーは、カンボジアのアンコール遺跡群の中心部から南東へ約15キロメートルに位置する、古代の都ハリハラーラヤ（現在のロリュオス）に建設された最初の寺院です。この寺院は、クメール王インドラヴァルマン1世（在位877-889年）によって、879年に王族の祖先を祀るために建立されました。特にヒンドゥー教の神シヴァに捧げられた聖所が中心となっています。

名称の由来

プリア・コーという名前は、「聖なる牛」を意味し、寺院の中央祠堂群の前にある3体の砂岩彫像に由来します。これらの彫像は、シヴァ神の乗り物であるナンディン、つまり白い雄牛を表しています。

歴史

クメール王朝の創始者であるジャヤーヴァルマン2世（在位802-834年）は、802年に王朝を確立した後、最終的にハリハラーラヤに都を定めました。インドラヴァルマン1世は、ジャヤーヴァルマン2世の息子であるジャヤーヴァルマン3世の母、ダラニンドラドゥヴィー妃の親族であり、王の補佐役を務めたとされています。インドラヴァルマン1世が王位に就くと、まずインドラタターカという大貯水池を築き、次いで879年にプリア・コーを、881年にはバコン寺院を建立しました。これらの建設プロジェクトは、王の平和的な統治と、拡大する領土からの収益によって可能になったと考えられています。1990年代初頭からは、ドイツ政府機関の出資によるアプサラ機構との共同プロジェクト（German Apsara Conservation Project, GACP）によって、塔の修復作業が進められています。

構成

プリア・コーは、東西500メートル、南北400メートルの環濠で囲まれており、寺域内には二重のラテライト製の周壁があります。外周壁は東西97メートル、南北94メートル、内周壁は東西58メートル、南北56メートルです。

プリア・コーの祠堂は、同じ砂岩の基壇上に配置された6基の煉瓦の塔で構成され、それぞれが2列に並んでいます。塔は東向きで、中央の祠堂がわずかに西に引っ込んでおり、最も高いです。これらの聖所は、神格化されたインドラヴァルマンの3人の祖先とその妻たちに捧げられています。前方の中央祠堂は、クメール王国の創始者ジャヤーヴァルマン2世に捧げられ、彼が死後にシヴァ神と合体した姿であるパラメーシュヴァラが祀られています。左（南側）の祠堂には、インドラヴァルマン1世の父プリティヴィンドラヴァルマンを神格化したプリティヴィンドレシュヴァラが、右（北側）の祠堂には祖父（母方）の化身であるルドレシュヴァラが祀られています。後方の3つの小さな祠堂は、これらの3人の男性の妻に捧げられています。主要な祠堂には、ヒンドゥー教の神シヴァの象徴が備わっています。

プリア・コーは、その歴史的、宗教的な意義に加え、クメール建築の初期の優れた例としても評価されています。寺院の建築様式や彫刻は、後のアンコール建築に大きな影響を与えたと考えられています。修復作業が進む現在も、その美しさと歴史的価値は多くの人々を魅了し続けています。

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