プリモ・カルネラ

プリモ・カルネラ：巨人ボクサーの栄光と影

プリモ・カルネラ (1906年10月26日 - 1967年6月29日) は、イタリア出身の伝説的なプロボクサーであり、プロレスラーです。その巨人ともいえる体格と、数々のタイトル獲得、そして幾多の疑惑に包まれたキャリアは、今もなお語り継がれています。

巨躯のボクサー

カルネラは、2メートル近い身長を誇り、「史上最も背の高い世界ヘビー級王者」として喧伝されました。しかし、実際は198cmであり、当時最も身長の高い王者だったジェス・ウィラード(201cm)には及ばなかったものの、それでもヘビー級においては圧倒的な体格を誇っていました。その巨体維持のため、カルネラは驚くべき量の食事を摂っていたと伝えられています。朝食だけでオレンジジュース1クォート、牛乳2クォート、トースト19枚、卵14個、パン1塊、ハム半ポンドという、現代人からすれば信じ難い量です。

疑惑の試合とカリフォルニア追放

カルネラのキャリアにおいては、いくつかの試合に八百長疑惑が付きまとっています。特に1929年のヤング・ストリブリング戦とその再戦、1930年のレオン・シュヴァリエ戦は、その疑惑が強く、カルネラはシュヴァリエ戦後、カリフォルニア州から追放処分を受けています。シュヴァリエは、カルネラに敗北すれば殺されると脅迫されたと証言しており、他にも数々の試合に八百長疑惑が浮上しています。これらの疑惑は、カルネラのキャリアに暗い影を落とすものとなりました。

世界ヘビー級王座獲得と喪失

1928年、レオン・シーのスカウトによりプロボクサーとなったカルネラは、1933年6月29日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでジャック・シャーキーを6回KOで破り、世界ヘビー級王座を獲得。この快挙は、彼のキャリアにおける最大の輝きとなりました。しかし、その栄光は長くは続きませんでした。1934年6月14日、マックス・ベアに敗れ王座から陥落。その後も、ジョー・ルイスとの対戦で敗れるなど、王者としての地位は維持することができませんでした。

プロレスラー転向と晩年

1938年には糖尿病が悪化し、腎臓摘出手術を受けるなど、健康状態は悪化の一途を辿ります。しかし、1945年にはボクシングに復帰。その後、1946年にはプロレスラーに転向します。プロレスラーとしては、NWA世界タッグ王座（サンフランシスコ版）、NWAインターナショナルTVタッグ王座（ロサンゼルス版）などを獲得するなど、活躍を続けました。日本プロレスにも来日し、力道山と対戦したことも知られています。1953年にはアメリカ合衆国の市民権を取得し、ロサンゼルスに移住しました。1963年に引退するまで、プロレス界でもその巨体と存在感を示し続けました。

カルネラをモデルとした作品

カルネラの波乱に満ちた人生は、バッド・シュールバーグの小説『殴られる男』のモデルとなり、後に映画化もされました。この作品は、カルネラの栄光と挫折、そしてその人間性を浮き彫りにしたものです。

死後と殿堂入り

1967年6月29日、肝臓病と糖尿病の合併症により死去。しかし、その功績は今もなお高く評価されており、1990年には世界ボクシング殿堂入りを果たし、2019年にはWWE殿堂のレガシー部門に迎えられました。プリモ・カルネラは、その巨体と強烈な個性、そして数々の伝説を残した、まさに不世出のボクサーであり、プロレスラーでした。彼の生涯は、成功と挫折、栄光と影、そして常に謎に包まれた魅力に満ち溢れています。

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