プリュダンス・セラファン＝バルテルミ・ジラール

プリュダンス・セラファン＝バルテルミ・ジラール：幕末の日本に尽力したフランス人宣教師

プリュダンス・セラファン＝バルテルミ・ジラール（Prudence Seraphin-Barthelemy Girard、1821年4月5日 - 1867年12月9日）は、19世紀に日本で活躍したカトリック・パリ外国宣教会のフランス人宣教師です。彼は初代フランス公使ギュスターヴ・デュシェーヌ・ド・ベルクールの通訳として、日仏間の外交交渉に貢献するとともに、日本のカトリック教会の基礎を築きました。

生涯

1821年、フランス中部のブールジェ司教区で生まれたジラールは、1848年に司祭に叙階され、香港に渡りました。当初は日本宣教師として内定していましたが、司教の指導のもと、香港のポルトガル人やスペイン人の司牧を担当しました。

1855年、ジラールはメルメ・カション神父、ルイ・テオドル・フューレ神父と共に琉球王国に到着しました。上陸後、彼は那覇の聖現寺で日本語を習得し、その語学力を活かして、後に日仏間の交渉で重要な役割を果たすことになります。

1858年、日仏修好通商条約が締結されると、ジラールは日本教区長に任命されます。しかし、彼はこの任命を辞退し、新たな教区長が任命されるまで暫定的にその職務を務めることを申し出ました。

1859年、初代フランス公使デュシェーヌ・ド・ベルクールが日本に到着すると、ジラールは通訳兼総領事館付司祭として江戸に入り、済海寺に住みながら、公使館の事務や居留民の司牧、病人の癒しに尽力しました。また、ベルクールの協力を得て、聖堂建築資金の募集も開始しました。

ジラールは幕府にフランス語教授を申し出て、受講者の人選を依頼しましたが、彼のフランス語教育はあまり普及しませんでした。本格的なフランス語の普及は、1865年の横浜仏語伝習所の設立を待つことになります。

1860年頃、ジラールは横浜外国人居留地に最初のカトリック教会建設のための租借権を取得し、1862年には聖心教会（後の山手教会）を完成させました。この教会には多くの日本人が見物に訪れましたが、当時はキリシタン禁制下であり、信者が捕縛される事件も発生しました。ジラールは公使ベルクールと協力して、捕らえられた信徒の釈放に尽力しました。

その後、フランスに帰国したジラールは、幕府のキリシタン禁制撤廃運動を展開し、ローマ教皇に日本の現状を報告しました。1863年に横浜に戻った彼は、フランスから贈られた鐘の聖別式を挙行しました。

1864年の四国艦隊下関砲撃事件や、翌年の大坂での賠償交渉では、通訳を務めました。1865年には大浦天主堂の献堂式を挙げました。1866年にプティジャンが司教に叙階された後、ジラールは横浜教会の主任司祭となり、関東地区の布教準備に取り掛かりました。

しかし、1867年、横浜天主堂が火災により焼失し、ジラールもその炎に命を落としました。彼の遺骸は横浜の聖堂内に埋葬され、後に山手教会に改葬されました。

業績と影響

ジラールは、日仏修好通商条約締結後の初期において、フランス公使の通訳として外交交渉を支え、両国間の関係構築に大きく貢献しました。また、日本のカトリック教会の基礎を築き、信徒の保護や教会の建設に尽力しました。

彼の功績は、没後も長く記憶され、2008年には日仏国交開始150周年を記念して、記念切手が発行されました。

まとめ

プリュダンス・セラファン＝バルテルミ・ジラールは、幕末の日本において、日仏関係の発展とカトリック教会の布教に尽力した重要な人物です。彼の生涯は、異文化間の理解と協力の精神を象徴するものとして、今日においても高く評価されています。

参考文献

日仏修好通商条約締結百五十周年記念特別展示「維新とフランス――日仏学術交流の黎明」展 - 東京大学総合研究博物館
日本のカトリック教会の歴史 9.キリシタンの復活 - Laudate 女子パウロ会
横浜居留地とカトリック教会 - 聖母の騎士
日仏国交150周年　〝人物記念切手〟（幕末シリーズ）の発行について - 日仏協会
日本に眠るパリ外国宣教会宣教師列伝
アーネスト・サトウ著「一外交官の見た明治維新」　（上下）（坂田精一訳、岩波文庫）
* フランシスク・マルナス『日本キリスト教復活史』みすず書房、1985年

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